田舎から上京してきた私は、ひょんなことからアパートを借りて初めての一人暮らしをすることに。
「私って方向音痴だし、不器用だし、大丈夫かな…?」
なんて心配しながら向かうと、そこにいたのはとてもかわいらしい異形。
個性豊かな10人の女の子たちと始める、笑いあり涙ありの都会生活!
モチーフ | 紹介 |
私 | 102号室 |
「キラキラの都会、新しい生活…!」 主人公。田舎から上京してきたが、分からないことが多すぎてマジピンチ。作中の「田舎」がどこなのかは全く明かされないうえに回想シーンすらない。主人公のくせに特筆すべきことがないキャラだが、情報を追記しようとすると作品全体のネタバレになるために誰も書き足そうとしない悲しきキャラ。 | |
自分のリーダーを4回復 | 101号室(PP回復と共用) |
「メイクは女子の基本武装よ!」 PP回復の姉。大学生だが年齢、学部共に不詳。美容に精通しており、いつも肌の調子を気にしている。優しい。嫌われてはいないしむしろ好かれている方だが、妹の(主に大きなお友達への)人気が驚異的なためファンからの評価は「いいキャラだよね」で止まっている。 | |
自分のPPを2回復 | 101号室(リーダー回復と共用) |
「健康的で文化的な、最低限度の生活。甘いものは別腹です」 リーダー回復の妹。高校1年生。手先が器用で家事全般を担当する。陽寄りの姉と違ってこっちは陰寄りである。大きいお友達からの人気が驚異的で、某イラスト投稿サイトには最も多くのファンアートが投稿されており、その過半数はR-18である。その人気の秘訣は制服、ロリコンウケのいい低身長貧乳、ロングの黒髪と様々だが一番は原作者の趣味が透けて見える大量のサービスシーン。たぶんこの子といちゃいちゃするストーリーを描くために作った作品。 ちなみにちょっとえっちなことに興味がある模様。 | |
相手のリーダーに2ダメージ | 103号室 |
「ちっ、違うわよバカ!これはそういうんじゃなくて…」 ツンデレ。それくらいしかキャラクター性がない。「私」にちくちくした態度を取ってくるが、内心は新たな住人に興味津々。ストーリー中ではその性質から主人公に有益な助言をする立場にあることが多い。誰よりも努力家で、誰よりもその努力が実らない。 疾走とは決してなかよしなんかではない。 | |
疾走を持つ | 105号室 |
「あれっ、私また何かやっちゃいましたか…!?」 ドジっ子。タンスに小指をぶつけないように部屋から家具をほぼ排除している。顔ダメとは仲が良く、一緒に買い物に行ったりする。時々憂いを含んだ表情を見せるが、真意は分からない。考察班により仮説がいくつか挙がっている。男性ファンからの人気がすごいが女性ファンからはあまり好かれない傾向にある。 また、PP回復に次いでファンアートが多い。ドジを踏んで謝罪からのえっち要求が簡単に通りそうなのでR-18イラストが多い。 | |
カードを2枚引く | 106号室 |
「金を稼いでも、使い道がなきゃ意味がない…」 なんかすごい会社ですごいプロジェクトのリーダーをしているすごい人…らしい。いっつも疲れているが、お気に入りのコーヒーを飲むとハイになる。趣味は貯金で、その額は一般人のそれとは思えないレベル。作者によるご都合展開の収束のために使われることが多いキャラで、なにかと苦労人ポジを押し付けられる傾向にある。 | |
EPを消費せず進化できる。を持つ | 201号室(大家) |
「どんなことでも頼ってね。私はみんなのお母さんなんだから」 みんなのママ。癒し枠。人当たりがよく、個性的なアパートの面々とも仲が良い。30代独身でもちもちしてるのでえっちなイラストが多い。なんなら人妻シチュの本もある(繰り返すが独身である)。 ストーリーの本筋にはあまり絡んでこないが、だからこそ心のよりどころとしての人気が高い。 | |
必殺を持つ | 202号室 |
「私」のことを愛している。 誰よりも何よりも熱烈に愛している。 自分だけの物にしてしまいたいと思っている。 その輝きを穢してしまうかもしれないことに僅かな興奮を感じながら夢の中で手を伸ばしそれを恥じる感情と同時に高鳴る鼓動を大事にしている。 この欲望は叶わないと知っている。 「私」を殺してしまいたいと思っている。 | |
他のフォロワーすべてに3ダメージ | 203号室 |
「ぁらしのじんしぇえ、好きに生きて何がぁるぃってんだよ〜?」 ゴミ屋敷在住のニート。酒を飲んでは暴れ、そして死んだように眠りにつくダメ人間。働いている姿は誰も見たことがないが、金には不自由していない様子。 実は彼女は106号室の「カードを2枚引く」の親戚にあたる人物。彼女同様、このキャラもストーリーの本筋にはあまり絡んでこないうえ登場時の印象が最悪なので人気は低め。 あるシーンで大活躍するため、そこだけは評価されている。 | |
守護を持つ | 205号室 |
「世界は危険に溢れてる。自分のことくらい、自分で守りたい」 2日に一回は何らかの事件に巻き込まれ、そしてその戦闘能力で自衛し解決している。趣味は筋トレとボクシング。アパートの中でも古参メンバーの一人で、「私」に様々なアドバイスをしてくれる。何かを嗅ぎまわっている様子だが、決して教えてはくれない。 毎回様々な死亡フラグを立てるのだが、毎回持ち前の身体能力で生き残るのでファンの中には「守護姉いるから安全な回」という認識が定着した。あまりにも露骨な演出に「いつか凄惨な死を遂げるのではないか」と考えるファンもいる。 | |
ランダムな相手のフォロワー1体を破壊する | 206号室 |
「所詮、私たちは箱の中。」 いつも真っ黒いローブを着ている。フードの中の顔は誰も見たことがない。正体不明。世界の真相を知る者。 |
第一話「初体験!都会の眩しさこんにちは!」
第二話「おもてなし!学生姉妹は凸と凹?」
第三話「刺激的!ドジっ子ツンデレ仲が良い?」
第四話「(情報なし)」(ちなみに筆者の一番のお気に入り回です)
第五話「のんだくれ!まだまだいけるぞもってこい!」
第六話「快進撃!事件トラブルお手のもの?」
第七話「影、忍び寄り、蠢いて。」
第八話「夏祭り!食べて遊んでときめいて!」
第九話「大災害」
第十話「並行する世界」
第十一話「箱舟」
第二話「おもてなし!学生姉妹は凸と凹?」
第三話「刺激的!ドジっ子ツンデレ仲が良い?」
第四話「(情報なし)」(ちなみに筆者の一番のお気に入り回です)
第五話「のんだくれ!まだまだいけるぞもってこい!」
第六話「快進撃!事件トラブルお手のもの?」
第七話「影、忍び寄り、蠢いて。」
第八話「夏祭り!食べて遊んでときめいて!」
第九話「大災害」
第十話「並行する世界」
第十一話「箱舟」
第一章「アーク編」(完結)
第二章「時空の掌握者編」(完結)
第三章「虚数物体編」(連載中)
第二章「時空の掌握者編」(完結)
第三章「虚数物体編」(連載中)
キャラクターについて
・表面上のつながりはキャラ紹介に書いた通りですが、この中に二人明らかに他とは違う共通点を持つ者らがいますね。
・時空の掌握者の能力は全部で10個ではありません。
・時空の掌握者の能力は全部で10個ではありません。
登場するアイテムについて
・アークは手のひらサイズの箱です。それはこの世界でも変わりません。
・箱とは何か。そもそも箱の中には何が?
・Q.虚数とは何か?A.実数の対ですね。この概念を用いると、それまで見えなかった数学の世界を大きく拡張することができます。
・箱とは何か。そもそも箱の中には何が?
・Q.虚数とは何か?A.実数の対ですね。この概念を用いると、それまで見えなかった数学の世界を大きく拡張することができます。
世界に関する情報について
SS(Side Story)
注意
これらのSSには犯罪及びそれに準ずる行為
またその他権利を侵害する行為などが含まれますが
それらを勧める意図は一切ありません
一目惚れ、というやつだった。
その笑顔は優しい朝日のように、私の心を溶かした。
うちの大家さんと話す彼女を、私は隠れて見ていた。彼女は今日からアパートに引っ越すことになったらしい。世間知らずな田舎少女…という雰囲気。しかしながら人を惹きつける魅力がある。私は思わずシャッターを切った。
幸運なことに彼女の部屋は私のすぐ下の102号室。その気になれば、純朴な少女の生活音くらい聞き放題である。
って、何を考えてるんだ私は!そんな犯罪まがいの行為していいわけがない。私はそこまで下卑た人間じゃない―――いや、"そうなってはならない"のだ。
私の母親はいわゆるホームレスで、もちろん私もホームレスとして生まれた。父親は知らない。はした金のために親が体を売ったとか、そんなところだろう。しかし、母は私を捨てることだけはしなかったので、今でも感謝している。
路上は寒かった。黒ずみ穴の開いた服、使い古された毛布と粗末なブルーシートの小屋では雨風など防げない。それでも私がここまで育ったのは幸運というほかない。
ホームレスにとっての問題は衣食住に止まらない。
例えば、傷病の治療である。残飯漁りやごみ漁りのため、私たちは必然的に手を汚さなければならない。時に排泄物や吐しゃ物だろうと手を突っ込む覚悟をも必要とするのがホームレスの生活だ。
そんな生活をしていれば、当然けがや感染症に繋がる。それらは、免疫力の落ちた体を確実に破壊していく。それが私の母の死に様であった。
母が死んだのは私が13歳(これは司法解剖と私の記憶による推定だ)になろうとしていたころだ。一般的には中学生くらいの時期である。そのころには私もホームレスの生活が板についていたので、生き方については十分わかっていた。母に教えてもらった知識を使いながら、拾ってきた本を読んだりもした。
しかし、"わかっていること"と"できること"は違う。それを突きつけられたのは母の死から一か月ほど後だったと思う。
私の体を理不尽な暴力が襲った。同じホームレスの男による略奪である。一般的にはホームレス内にもコミュニティがあり、仲間内で略奪を働いたり盗みを行ったりすることはご法度なのだが、母を失った非力な私に小さな社会は容赦がなかった。
殴られ、蹴られ、気を失い眠りにつく。抗うすべもなく、ただひたすらに蹂躙され、僅かな財産すらも奪われた。母の形見の毛布でさえも。
「このまま目が覚めなければいいのに」
全ての気力を削がれ、そんな気持ちを抱えながら目を閉じた私。次の瞬間目に入ったのは、暗い曇天ではなく眩い照明だった。
「ここは…?」
この世の物とは思えないふわふわとしたものに包まれながら、私は身を起こす。ぎしりと鳴ったその寝床は薄い桃色。なんと、これはおとぎ話の産物"ベッド"である。冷たい床から数十センチ離れた場所に私は寝ているのだ。
きっと私はあのまま死んで、天国に来たのだろう。母もどこかにいるのだろうか。傷だらけ痣だらけの体を見せたら、きっと悲しむだろうな。
そう思い自分の体を見てみる。
見慣れない服を着ている。そして、全身には傷の代わりに絆創膏や湿布が貼られている。腕を動かしてみると、傷はまだ痛んだ。
「あら、目が覚めたのね!」
ドアを開け出てきたのは、優しそうな雰囲気の女性だった。ホームレス連中と違って、しっかりとした服に身を包み、健康的な肌の色をしている。花のような香りをふわりと漂わせる。笑顔の似合う女性だった。
「あなたは、誰ですか」
私は睨みつけるようにその人を見た。ホームレスにとって一般市民とは敵である。私たちは日陰者。社会とは隔絶された存在でなければならない。同じ人間として扱われることすらない、ベクトルの違う存在だからだ。
「私はあなたの味方よ」
彼女は迷いなくそう答えた。私への敵意や忌避など全く感じさせない。同時に私の中にあった懐疑心は少しずつほどけていった。
ここは彼女の家で、私は気を失い倒れていたところを買い物帰りの彼女に救われたらしい。23歳独身で、この家は親から受け継いだアパートだという。
私はこれまでのことをすべて話した。長々とした身の上話を彼女は親身になって聞いてくれた。ときどき、言葉を詰まらせた私を撫でてくれることもあった。
「本当に、大変だったのね…」
彼女の表情は曇りを含んだものに変わっていった。初対面の笑顔が印象的だったからこそ、その暗く苦しい表情は痛々しかった。美しい花を踏みにじってしまったような、後悔にも似た気持ちが心を締めつける。
そして、次に彼女が放った言葉は私の人生を変えることになる。
「私の家族になる、なんてどうかな?」
こうして物語は始まった。
当たり前のことだが、ホームレスの子である私には戸籍がなかった。もちろん出生届さえ出されていない。そのため、私が生きるにはまず役所で様々な手続きをする必要があった。現代社会では、身分を証明できないと大幅に行動が制限されるからだ。
窓口にいた男性は、親切に様々な手続きを手伝ってくれた。役所は私のような人間に力を貸すことはないと思っていたので、これには驚いた。
途方もない手間がかかっただろう。手続き開始から1年弱、大家さんと彼の尽力の甲斐あって、私は何とか他界した母との血縁関係を証明するに至り、住民票も作ることができた。
―――とはいえ、働くことはとても難しい。
ホームレス上がりの私には、ハングリー精神こそあれどまともな知恵も力もありはしない。義務教育さえ満足に受けていない私は、とりあえず大家さんに養われることに。
アパートの管理を手伝い、近所のボランティアに参加したりと社会勉強をすること4年。途中からは夜間中学にも通い始めて、私は18歳になった。
「私、専門学校に行きます」
それは、清算の決意だった。
「やりたいこと、見つかったのね」
いつも通りの、暖かい言葉だった。
選んだのは情報系の専門学校。実用的で、就職にも近づけるだろうと見込んでの選択だった。バイト代を貯めて買った機材を使いながら、私は必死に勉強した。
2年後、何事もなく卒業。私は元から要領のいい方だったらしく、軌道に乗り始めてからはとんとん拍子に事が進んだ。
そして3年、21歳の現在に至る。フリーで仕事を受け、ホームページの制作や管理、技術講師としての職業をオンラインでこなすまでになった。
ここまで私が生活を取り戻せたのも、あの日私を見つけ救ってくれた大家さんのおかげである。私と大家さんの尊厳とその恩に懸けて、同じアパートの住人の生活音を盗聴したり襲ったりなんてできないのだ。
引っ越してきたあの子の登場により急展開を見せた私の物語だが、大家さんとの邂逅から今まで、私の人生は比較的順調に進んでいたと思う。
学校に通い、様々な人と関わり、職を手に入れ自立を果たした。一般的に幸せと言っても過言ではない水準の生活をしているし、事実私は幸せだ。
この生活がずっと続いてほしい。
そんな思いすらも簡単に崩れ去るということを、10年前の私ならよく知っていたはずなのに。
5月。その日は、いつもとは違うスーパーで買い物をした。近所のスーパーがリニューアル準備中で、せっかくならと市中心部の大型スーパーまで出向くことになったのだ。
普段は目にしない珍しい品々に心を踊らせ、予定より1000円近く多い買い物をしてしまったが後悔はない。むしろ多幸感を感じながら、私は市内を歩いていた。
見慣れないが、変わったものも特にない帰り道。すたすた歩いていると、物々しい人だかりが目に飛び込んできた。何人かの救急隊員と警察が、何かを取り囲んでヒソヒソと話している。
なにか事件でもあったのだろうか?いずれにせよ、私が関わることではない。横を素通りしようとしたその時だった。
「行き倒れですね」
足が止まる。
耳に入ってきたこの一言は、私にとって極めて重いものだった。人々の背中の奥に、母の姿が透けて見える。
…よく考えてみると、このあたりは私が以前暮らしていた場所だ。陽の当たる場所から見える景色は、人目を避けたあの日とは違って見えていたのだ。ここは確かに私の出身地で、すこし離れたあたりにホームレスの集落があった。あそこには喫茶店の生ゴミがあったとか、裏のビルには外に蛇口があったとか、芋づる式に記憶が掘り出される。もしかしたらその行き倒れも、私が知っている誰かかもしれない。私は買ったアイスの存在も忘れてその人だかりに吸い寄せられていった。
「酒で臓器がやられてるよ」
忍び足で、息を殺して。緊張感のある空気が体を固め、体はプルプルと震えていた。
「もう少し遅かったら腐ってただろうな」
声が段々とクリアになっていく。高鳴る鼓動がうるさく響く。「ここで止まれ」と警告するように、あるいは私を急かすように。
「こいつはかなりのベテランだぞ」
ともすればその背中に触れそうな近さ。ほんのすこしの距離が崩れてしまわぬよう、慎重に。爪先立ちで、壁を超えて。隠れて見えなかったその奥の物が、徐々に姿を表す…
一瞬。
目が合う。
鼓動が止まる。
血液が凍る。
耳鳴りが満ちる。
鈍い痛みが、また。
全てが吐き出そうで。
全てが不確かになって。
世界が反転した。
直後、無数の穴が私を捉えた。どうやら私は無意識に声を出していたらしい。ただ一点に集められた視線は、鋭い針のように私を突き刺した。
一瞬を引き延ばした感覚が、加速度をつけて現実へと引き戻される。世界が加速する。止まった鼓動が、血が動き出し、体が痛み出した。
顔の真ん中から、一際大きな穴が新たに開かれもぞもぞと動く。言葉は私の耳には届かなかった。何もわからない。立ち尽くすしかなかった。
すると一つ、また一つと生まれて動き出す。中には立ち上がって手を伸ばす者までいる。思考はまだ停止したまま。
激しい運動のあとのように、呼吸が荒くなる。視界が狭くなり、脳が圧迫される感覚。頭痛にも似た収縮のプロセスに、私の体は無意識に動き出していた。
私は走った。
何も考えられなかった。
ただ、あの中にぽっかりと空いた2つの底なし穴だけが私の心を縛り付けていた。いつか刻まれた古傷とともに、私の心は弱く脆いあの日へと逆行していった。
私はまだ走っていた。
灰色に支配された、虚無の世界。いつもよりぐっと近い真っ黒の地面は、踏みしめるたびにしっかりとした硬さを感じさせる。見通しは良すぎるくらいで、地平線は途切れることなく私を囲っていた。
荷物は何もない。薄汚れた昔日を思い出すぼろぼろの服を来て、目的もなくひたすら走っていた。足音も、風を切る音も、寒さも暖かさも感じない。
「なんで、私はこんなにも必死なんだろう?」
走り出した場所も、ゴールも分からない。ただ、がむしゃらに脚を動かす。
どこからともなく現れたのは、あの頃の大家さんだ。安らかな気持ちが心を満たす。世界はセピア色と暖気に包まれた。私の肌に初めて触れた、「熱」という感覚。
私は一旦走るのをやめて、歩くことにした。大家さんは少し先にいるが、彼女はきっと私から離れることはない。それに、ずっと走り続けられるわけはない。ここで休まなければ、いつかきっと倒れてしまう。
「私、頑張りました」
期待した。彼女は私を褒めてくれるだろうか、慰めてくれるだろうか。それとも、この先のために勇気づけてくれるのだろうか?
私は少し上を見つめる。彼女の優しい笑顔を見るために。
「ひっ…!」
その顔に温もりはなかった。世界が深い藍に染まる。
「他人を蹴落として、奪って、逃げてきた。そうでしょう?」
底のない暗黒。吸い込まれそうな目に、私への気遣いや愛情はない。軽蔑や嫌悪もない。ただただ"無"だった。
私はまた走り出す。恐怖と不安にまみれながら、脚の動く限りひたすらに。
先はまだ見えなかった。振り返る勇気も、余裕もなかった。深い海の底のような視界は重苦しく、私を押し潰そうとしている。
しばらく走った。意味もなく、理由もなく、しまいには唯一持っていた気力さえ尽き果てた。棒のようになった足とオーバーヒートした体を投げ出し、地面に激突する。これは痛かった。
痛みは一度では終わらなかった。
はるか昔の、しかしよく覚えている感覚。頭を、胴を、腕を、腹を、掴む叩く殴る蹴る。体中を襲う強大な暴威。何度衝撃が襲っても、私の体は動かない。不意に涙がこぼれた。
一通りの蹂躙が終わると、力の権化は地に伏す私を離れ、"また"走っていった。いつの間にか赤錆びた世界の先へ、黒い影は向かっていく。
よく見ると、その体は目も当てられないほどにみすぼらしかった。いや、朽ち果てていたと言ったほうが正しいかもしれない。生物の体とは思えないほどに、不完全な存在だった。地面と垂直に立ち、走る彼の姿はとても弱弱しかった。
少しするとそれは見えなくなった。それは遠く離れたからでも、地平線に飲まれたからでもない。彼の体は地面に平行になった。
地面が揺れている。大勢の人間が駆けてきた。きっと、あの影を助けるためだろう。彼はもう一人では立てそうになかった。誰の手助けもなければきっと死んでしまう。適切な治療が必要だった。
轟音はどんどん近づいてくる。揺れは激しさを増し、傷ついた体に響いた。世界を包む赤茶色がだんだんと眩しいほどの橙色に変わる。それは夜明けの合図だった。
人々が手を貸せば、あの人はきっとまた走り出すことができる。小さな希望がこの地平を照らし出したように思えた。
しかし大群が止まったのは、彼ではなく私の周りだった。戸惑う私にはお構いなしに、大量の人影が私を囲う。
足音が止み、静寂が訪れた。影たちはただ突っ立って私を見下ろす。凹凸のない平たい頭がうなだれる様子は、内側から見ている私には不気味に見える。
私ではなく、あの人を。
体に力が入らない中、絞り出すように声を出し…
突然、かき消された。
静寂は何の前触れもなく切り裂かれ、耳を塞ぎたくなるほどの騒音が響く。それらは黒い影の中にぽっかりとあいた、溶岩で満たされたような洞窟たちから発されていた。
影たちは口々に好きなことを喋っているようだ。しかし、あまりの数にそれぞれを言葉として認識することは難しい。ただ一つわかるのは、それらは私に対して肯定的な意見を叫んでいるということだ。
私は大丈夫、あの人を先に。
いくら声を上げても、祈りは届かない。私は必死に叫び、そして気付いた。
あれほど痛めつけられた体が完治している。声を出すことすらままならなかったはずなのに、今では叫び、立ち上がることさえできそうだ。痛みも傷もどこかへ消え、代わりに体の内側から湧き上がる炎のようなものを感じる。それは間違いなく"正"のエネルギーであったが、同時に奇妙な違和感をも覚えるものであった。
なんにせよ、傷が癒えて元気になったということに間違いはない。私は立ち上がり、騒がしい集団をかき分け、彼のもとに向かうことにした。
そうして、一人目の影に接触したときだった。
今まで棒立ちしたままだった彼らが初めて行動に出た。肩に触れ押しのけようとした腕が掴まれた。この世のものとは思えない力で、ピクリとも動かせない。
暴れようにも、片腕が縛られた状態でできることは少なかった。影を殴ろうと試みるも、虚空を殴るような感触が帰ってくるのみだ。まだ自由な両足を使いなんとか右腕の自由を取り戻そうと、懸命に地を蹴った。
「ひゃうっ!」
今度は左脚が別の影に触れてしまった。すると、浮遊感と共に脚がガッチリと固定される。もちろん動かすことは叶わなかった。かろうじて動かせる左腕と右脚を失うわけにはいかないので、少しの間暴れずに様子を見ることにした。
私が抵抗しないとわかると、手足を掴む2つの影はその腕を上げ始めた。私の体もより高い場所へと上がっていく。状況を理解できないでいるうちに、いつの間にか私の四肢は影たちに支えられ神輿でも担ぐかのような形になっていた。
上からだと、先程の男がよりはっきりと見える。彼はうつ伏せのまま、体を震わせながら、きらきらと潤んだ目でこちらを見ている。助けを求めているのは言うまでもない。
痛かった。癒えた体でなく、もっと奥の奥にあるなにかが。なぜ、どうしてと、意味のない問いが求めるのは、平等な救い。
影たちは未だ騒ぐのをやめず、私を何処かに運び出した。動こうにも、先程より多くの腕が体を縫い付けるように抑え込んで離さない。
狂った太陽はいつの間にか頭上へと登り、ギラギラと輝きながら世界を燃えるような緋色で染めている。這いつくばる男と、担ぎ上げられた少女を照らして。
目覚めた私に纏わりついていたのは、じっとりとした嫌な脂汗だった。シャワーも浴びずに寝てしまったらしい。身を起こすと、ぎしりと鳴ったのはベッド以上に私の体だった。
あれは夢だった。大家さんやあの男が出てきて、よく分からない世界が色とりどりに明滅して。体も、心も、あの痛みをはっきり覚えている。
ふと思い立ち、自分の体を見てみる。
出かけたままの服の袖を捲る。未だ掴まれた感触が消えない右腕には、くっきりと痕が残っていた。脚にも、体にも、実際に掴まれたような痕跡があった。
体に氷を詰められたかのような悪寒に、全身がぶるりと震える。
「私…何をされたの…?」
「『された』?笑わせるな」
誰が、どこから発しているのか。地の底から響いてくるような、低く重い声だった。その原動力が負の感情であるということは容易に理解できた。私に対する、深い憎悪と怨恨の念だ。
どす黒いエネルギーに晒された私の頭に、さっきまで消えかけていた感情が蘇る。走馬灯のように"二つ"の男が重なり合う情景が、私の心を揺さぶる。
もしかしたら、私は。
私のせいで、彼は。
「俺はお前に殺されたんだ」
……違う。私は誰も殺してなんていない。
「お前のせいで俺は」
…違う。私は悪くない。
「お前が全部奪った!」
「違う!!!!!!」
たまらず枕を投げつけた。どことか、誰とか、そういうものは定まらなかった。ただ、泣きそうになる感情の濁流に耐えかねて、体が勝手に動き出したのだった。
カチッ。
それが当たったのは、非常用にと備えておいた小型ラジオ。押されたスイッチは、停電時用のライトだ。ろうそくの炎のような暖かい光が室内に立ち込める。
その光の行く先へ、視線は誘われるように導かれる。たった一つのLEDライトが照らし出したのは、窓とは反対に位置しているクローゼットだ。私の体は勝手に動いた。何か他の存在に意思をもって操られているのではないかというくらい、何の根拠もない直感的行動だった。
ゆっくりと、音を立てることなく慎重に扉を開ける。炎に照らされ、私を導いた者の正体は…
「…嗚呼」
いつか撮った、あの子の笑顔だった。
午前2時。崩壊していく世界に、天啓が舞い降りた瞬間であった。
「あの…先日引っ越してきた方、ですよね?」
初めてのアプローチ。なるべく不審にならないよう、冷静に、慎重に。挨拶が遅れたことへの申し訳なさという印象を与えるよう、下手に出ることを意識する。
「はい!もしかして、202号室の方ですか?」
天使、いや女神?受け答え一つとっても愛らしい。屈託のないその笑顔が私を狂わせる。私の正体をすぐに察したのは、既に私以外の住民と会ったからなのか、それとも大家さんに説明されたからか。経緯はどうであれ、私という存在に多少の興味を持ってくれていると思うと、素直に嬉しかった。
「よくお分かりで…。ここまでご挨拶できずすみません」
「いえいえ、お会いできてよかったです!これからもよろしくお願いします!」
お互いに笑顔で軽く頭を下げる。お互いに、と言っても、その笑顔の質には天と地ほどの差があったが。
ともかく、これでファーストコンタクトは上々。一切怪しまれることなく、"普通の隣人"を演じることができた。今日の目標その1は達成である。
それでは、目標その2へ進もう。私は手に提げた紙袋から、一つの瓶を取り出す。
「これ、ハーバリウム…お近づきの印に。」
「わぁ、ありがとうございます!とってもかわいいですね」
宝石でも受け取ったかのように、丁寧に大事そうに手を添え眺める彼女。
それは、大きめのジャムの瓶で作った簡素なハーバリウム。爽やかな緑の葉の中心に鎮座するのは、桃色のうさぎ。これこそが最も重要な仕掛けである。
くりっとした二つの黒目は、生気を感じさせないのにすべてを見透かしているかのようだ。事実、彼女の眼はこれからすべてを見透かす第三の目として働いてくれるのだが。
「気に入っていただけたら嬉しいです。では…」
頭を下げ、軽く手を振りながら自室へ向かう。彼女は同じように手を振って、私のことを見つめてくれていた。
去り際まで笑顔と礼儀を絶やさない、予想通りの人格者だった。
自宅。目の前にはモニター。普段の仕事で使うこのモニターに映し出されているのは、コードの羅列ではなく色を持った映像だ。ここの真下、102号室内を撮影している。
桃色うさぎの両の目はこのためにある。怪しまれないように仕込んだ小型の太陽電池で半永久的に動く、私だけの監視カメラだ。
現在、昼の12時過ぎ。つまりはごはんの時間である。あの子の貴重な食事シーンを目に焼き付けるために(と言っても、無線で送られた映像は自動で録画されているのだが)、こうしてパソコンの目の前で待機しているのだ。
今日のメニューは、ネギがたっぷり乗った豚丼とカット野菜のサラダ。豚丼のほうはチェーン店のテイクアウトらしいので、とりあえず私も〇verで頼んでおいた。サラダのほうは、ワカメを乗せてチョレギサラダにしてある。カット野菜については同じようなものがうちにもあるが、同じドレッシングがないので妥協してノンオイルの青じそにしよう。
「いただきます」とはっきり聞こえそうなくらいにしっかり手を合わせ彼女は食べ始める。ハーバリウムを使ったことでマイクは諦めざるを得なかったのだが、やはり多少強引にでもつけておくべきだったと後悔。
銀色のスプーンに彼女のしなやかな指が絡みつく。あの美しい手が私だけに触れてくれるのだとしたら、それはどんなに素敵なことだろう…なんて妄想してしまう。そして彼女はスプーンに乗った一口を頬張る。その姿はCMの女優など比ではないくらいに魅力的で、緩んだ頬からは極上の味が香りと共に鮮明に伝わってくる。頼んだ豚丼への期待も膨らむばかりだ。
というか、美少女がスプーンを咥えてニコニコしてるのって、なんというか、その……『エロい』。口からスプーンが抜き取られ、もぐもぐと口を動かし、幸せを噛みしめてからごっくんと飲み込む。これじゃまるでフ■■
半分ほど食べ進めてから、彼女はスプーンからフォークへと持ち替えサラダに手を伸ばす。私は健康意識が高い方ではないが、彼女はどうなのだろうか?このサラダは果たして罪悪感の中和なのか、真面目に栄養バランスを考えた結果なのか…。
私は合わせるように用意したサラダを食べ始める。味は違えど、同じ野菜を食べて同じ喜びを噛みしめることで、少しでも彼女に近づいたと思いたかった。私の空腹を満たすのは、食べた物自体ではなくその感情であった。
私の豚丼が届いた頃に、食事は終わった。録画開始から数時間で既にこの取れ高、これから私はどれだけの幸せを彼女に頂けるのだろうか。考えるだけで気持ちは弾み、体が軽くなったような気さえしてくる。
しかし、悟られてはいけない。知らないうちに自分の生活が筒抜けになっていたと知ったら、もちろんいい気はしないだろう。これは私だけの密やかな楽しみとして、胸の奥にしまっておかねばならないのだ。
それから一ヶ月と少しが過ぎた。カメラは未だバレずに稼働したままだ。朝に昼に夜に、寝起きの、リラックス中の、お風呂上がりのあの子を見る生活。彼女の日々はどんな場面を切り取っても絵になった。芸術そのものと言っても過言ではないとさえ思う。
しかし最近はなんだか満足できない。いや、この覗き見自体はとても有意義な行為で、私は計り知れない活力をもらっていることは確かなのだ。にもかかわらず、何か足りない、もっと欲しい、そんな漠然とした欲求が心の中に渦巻いている。
風呂上がりの彼女を見て、ふと思う。シャンプーは何を使っているんだろう?ボディソープは何を使っているんだろう?
洗顔フォームは、化粧水は、入浴剤は?どんな順番で、どのくらいの時間をかけて、どんなふうに体を洗っているの?
知りたい。知りたい。知りたい。このままじゃいられない。部屋の一点を見ているだけじゃ足りない。彼女をもっと、深く、詳細に知りたい。知り尽くして、突き詰めて、その先でまた知りたい。
その夜は欲望ばかりが瞼の裏にちらついて、よく眠れなかった。蒸すような暑さがその影を見せ始める7月のことだった。
翌朝。寝不足の体を無理やり動かして、顔を洗って、着替えを済ませる。時刻は7時を回ったところだ。
今日は水曜日、プラゴミの日である。一週間に一度のこの日を逃せばまた7日間ゴミと共に暮らすことになるため、逃すわけにはいかない。
外に出ると、私は思わず目を覆った。地面に反射した強い日差しが、寝起きの私の無防備な目に直撃してしまったのだ。朝にもかかわらずもうだいぶ暖かく、明るくなってきたなあ、としみじみ思う。
よたよたと外廊下を歩いて階段を降り、集積所のほうに目を向けると、そこにはあの子がいた。ゴミ出しを済ませた彼女は、最後までこちらに気付くことなく、小さなバッグと共に出かけてしまった。離れていくのを見届けてから、私も階段を降りきって袋を置き足を止める。
目の前には、先ほど出されたばかりの彼女のゴミ袋。
プラゴミというのは生活を如実に反映する。今の時代ほとんどの商品はプラスチックで包装されているからだ。そこには商品名、原材料など様々な情報が書かれている。食べているもの、使っているもの、生活サイクルなど推定できる情報は少し考えるだけでも売るほど見つかる。目の前の袋は昨夜の私の悶々とした気持ちを解消するのにもってこいの宝箱と言っても過言ではない。幸い彼女はもう部屋に戻っているので、ここで拝借しても何の問題もない。一度家に持って帰ってしまえば、誰にもバレることなく中身を漁ることができる。周囲に人はいない。そもそもいらないものとして捨てられたのだから、私が拾って再利用しても何の問題もない…
まあ、なんというか、つまり私はそれを手に取った。
私の心は踊っていた。例えるならそう、クリスマスプレゼントをもらった子供はこういう気持ちになるのだろうと思った。私が初めてクリスマスプレゼントを受け取ったのは14歳のときで、無邪気な心で喜ぶということはなかったのだが。
中にはどんなものが入っているだろう?外から見た限りでは冷凍食品の袋があったが、きっとスキンケア用品の包装なんかもあるに違いない。もしかしたらすこしアダルトなものも入っていたり、するかもしれない。期待に満ちた軽い足取りが、階段の上を跳ねるように駆けた。
部屋に戻った私は、宝の山を目前に震えていた。それはもちろん、恐怖ではなく極度の期待からである。これで彼女のことをもっと深く知ることができる。これまで以上に、彼女と同じ物を食べて、使って、愛でることができる。夢は広がるばかりだ。
ぎゅっと結ばれた袋を汗のにじむ手でするりするりとほどくと、袋は中のごみの自重ではらりと開いた。まるで手慣れた遊女のように、蠱惑的な仕草だ。腹立たしい。たかがゴミの分際でここまで私を昂らせやがって。いいだろう、ならばその挑発に乗ってやろうと、熱にあてられた体を乗り出して中身を物色する。
それはまさに財宝と言っていい代物だった。
昨日の夜思い描いたシャンプーやリンスなど目ではない。数多の食品包装の中に、服のタグが、ナプキンの袋が、砂の中の砂金のように紛れているのだ。
私は息をするのも忘れてひたすらに漁り続けた。手を入れるたび新しい発見が手に入り、彼女の解像度がぐんぐん上がっていく。目薬をさす姿、新しいメイク道具を試す姿、生理に苦しむ姿…そのどれもが鮮明に浮かび上がり、きっとこんな表情をするんだろうという妄想でさらに幸せが増した。
全て確認し終わるのにそう長い時間は要さなかった。宝の山は崩れ落ち、後には少しのゴミと大量の金銀財宝が残った。結果を見れば、これは当初の想像以上の収穫だと言えるだろう。
たった一つの袋から、ここまで彼女を見てきた一ヶ月以上の情報を得ることができた。それも今までとは違った側面からの情報を。このゴミ漁りは、部屋の録画とともに、それからの習慣になった。
暑さが本領を発揮し、身を焼くような照り返しが地表を歪ませる8月。私の日課はまだ続いている。気づけばコレクションも増え、102号室の録画開始からは三ヶ月が過ぎた。満たされない心を満たすため、あらゆる手段を尽くしてきた。
そして今日も、私は"満たされない"病を再発していた。
後悔と不安に縛られた私を救った、偽りの炎と偶像。見ていたいという欲の先にあった知りたいという好奇心のように、今私が抱いているのは嫉妬心であった。
彼女に合わせ一足遅れて外に出ると、あの子は下で他の住民と話している。あれはたしか101号室の妹だ。内容までは聞こえないが、二人とも輝く目で、ときおり笑みをこぼしながら談笑している。
虫のような、蛇のような、どろりとした何かが私の中で蠢く。全身を這い回るような衝動に、逃げ出したくなる。その脚を抑えるため、私は倒れ込むような勢いで家に戻った。
…あの場所にいるのが私なら。
その日もまた、よく眠れなかった。最近は夜がやけに長い。
鏡を前に、最後の確認をする。
寝癖もない。控えめながらトレンドを抑えた服。準備は万全だ。
あの子の隣にいたいと願うのならば、まずは話しかけるところからだ。思えば、ハーバリウムを渡したあの日から一度も言葉を交わしていない。当然距離など縮まらないわけだ。初歩に戻って、地道に進んでいこう。
私は気を引き締めてドアノブを握る。彼女がこの時間に外に出るのは確認済みだ。合わせて家を出れば、話しかけられるタイミングは確実にある。
外廊下から階段を降り、何気ない顔で102号室の方を見る。手前から二つ目、のっぺりとした白い扉から飛び出る銀色のレバーが音を立てて傾いた。開いていく隙間から、ゆっくりと人影が見え始める。私は意を決して足を踏み出した――
気づけば私は階段に座り込んでいた。
怖かった。顔を合わせたらなんて言おうか、そもそも答えてくれるかさえわからない。3ヶ月近く会っていない同居人の世間話など彼女にとってはなんの意味もない。そんな事を考えると、私の体は自然にその場を離れ、帰る道へと勝手に足が向かっていた。
外廊下の柵の隙間から恐る恐る外を見てみる。あの子は私に気付くことなく歩いて行ってしまった。二人の距離は、近づくどころか一歩遠のいてしまったように感じる。私は沈む気分をどうにもできず、ただ家に帰るしかなかった。
その日、私は外に出てはあの子の帰りを待ち、そして家に戻るということを繰り返していた。明日、また明日と先延ばしにするより、今日から頑張ろうという決意からの行動だった。
何度目になるか、最初に外に出てから4時間ほどたった午後2時、彼女は帰ってきた。今日最後になるであろうこのチャンス、絶対に逃がせない。私は急いで階段を降り、身を隠しながらちらりと道路のほうを見る。
あの子はこちらにすたすた歩いてきている。大丈夫、心の準備はできている。第一声は「お久しぶりです」、最初の話題は猛暑に言及する世間話。問題ない。偶然を装ってここから飛び出し、そのまま図々しく話してやれ。
深く、しかし静かに息を整え、胸をさする。私ならできる。今日は私が生まれ変わる日。決意は変わらない。もっと二人の距離を近づけるため、もっと二人の関係を進展させるため、今日この瞬間の会話が重要になる。
だから私の体よ、早く動け。
何をしているのか。近づくあの子を見ていながら、私の体はこの場から動いてはくれなかった。今しかない、頭ではそう分かっているのに、足の裏が縫い付けられたように動かない。
やっとのことで進みだしたとき、彼女はすでにドアノブに手をかけていた。
「あっ、ぁ」
あれだけ復唱した言葉も、目の前にするとなぜか言えない。無意味なうめきは誰にも届かず消えていった。
一日目、結局私の計画は失敗に終わった。
今日こそは。
二日目、私の計画は失敗に終わった。
絶対に逃げない。
三日目、失敗に終わった。
早くしなければ。
四日目、また終わった。
五日目。
六日目。
七日目。
八日目。
何度繰り返す?
私は自分に問う。
同じ日々を、同じ過ちを、同じ後悔を。
あの肌に触れ、指を絡め、頬に熱いキスをして微笑み合い、そっと愛の言葉を囁く。二人の体を重ね、確かめ合う、そんな昏い欲望が渦を巻き、私の身を焦がしていた。
彼女に近づきたい。
笑顔を、恥じらいを、照れ隠しを、悲しみを、怒りを、恐怖を、愛を、すべて私のモノにしたい。誰にだって渡したくない。
気付けば私は外へ出ていた。8月23日、まだ暖気の残る熱帯夜。寝巻しか着ていないが、それでも少し暑いくらいの気温だ。
サンダルをぺたぺたとならし、ふらふらと階段を下りる。そのまま壁伝いに歩いて、柵を乗り越え、窓に手を当てる。意外にも鍵は開いていた。
すぅすぅと可愛らしい吐息が聞こえる。無防備な状態にある彼女は、私に気付くことなく眠り続けていた。リラックスした寝顔は見ているだけで私の心を満たしてくれる。やはり映像よりも直に見るのがいい。自らの目だけでなく、耳や肌で感じるこの感覚が大事なのだ。
ベッドの横に膝をつき、細い首筋に触れる。
大丈夫。もうすぐ私のモノにしてあげる。
手に持ったナイフを上に掲げると、月の光を反射してきらりと光彩を放った。これで私たちは永遠に、一緒にいられるね。
待って
私、今ナイフを持っている?いつ手に取った?そもそもこれは誰の物?眠っていた脳が急速に覚醒していく。夢から醒めたかのような、世界が開いた、そんな感覚。
私は家を出て、窓からここに入った?ありえない。常識的に考えてそれは犯罪。
いや、まず私は彼女の部屋を盗撮した。まぎれもない犯罪ではないのか?ゴミまで漁って、ストーカーと何ら変わらない。
そして今私はナイフを持って何をしようとした?彼女を殺そうとした。自分のモノにするなんて身勝手な理由で。
自分が自分ではないみたい、そういう表現がある。まさにそれだった。今までした行動が自分でも信じられない。正気な人間なら絶対にとらない犯罪行為の数々、正常な精神状態とは言えない依存心理。目の前の純真無垢な少女を崇拝、あるいは信仰するように、縋っていた。不安や後悔、そういう自分の弱さを受け入れてもらうために。
気持ち悪い。激しい自己嫌悪。なぜ今まで気が付かなかったのか。理解できない。ただ一つ確かなのは、私は許されないことをしたということ。
一人の人間のプライバシーを脅かし、傷つけ、命まで奪おうとしたこと。そして脳裏によぎるのは、一人の男性。私の幼少期に終わりを告げ、私の心を縛り続けていた今は亡き人間。
二人の人間を殺したも、同然。
全身の力が抜けるのを感じた。呼吸をするのさえ忘れてしまいそうなほどに、心がスッと抜けてしまった。
やがて、窓から温い風が吹き込んできた。肌を撫でる不快な感触に私の意識は揺られ、同時に意識もまたはっきりしてきた。
とりあえず、家に戻ろう。
すっかり重くなってしまった扉を音もなく閉める。私は靴を脱ぎ、そのまま壁にもたれかかった。
これからどうすればいいのだろう。
私が彼女に与えた損害は計り知れない。私がしたことをすべて知ったら、軽蔑や嫌悪では済まない。どう転ぶにせよ、これからこのアパートで暮らしていくこともできないだろう。
大家さんに申し訳ないとも思った。私を救い、育ててくれた第二の母親である彼女に合わせる顔がない。
様々な心配事が、浮かんでは消えていく。考えるのも疲れてきた。もう取り返しのつかないところにまで来てしまったという感覚があった。諦観と共に胸に広がったのは、もはや清々しいという感情だった。
そう、取り返しがつかない。謝罪、贖罪、いろいろ言葉はあるが、結局のところ取り返しがつかない。
ならばいっそ、消えてしまおうか?
罪が消えることはないが、私はいつだって消えてしまえる。私は特別な才能もない凡人、いやそれ以下。たまたま人に手を差し伸べてもらっただけの掃き溜めのゴミだ。
あの男への禊も、大家さんへの恩義も、彼女への愛も、罪も、私の感情。死んでしまえば、全て無になる。
楽だと思った。少なくとも、今苦しんで生きていくよりはよっぽど幸せな道であると。
幸い手元にはナイフがある。運命とさえ思えた。このナイフはあの子でなく、私を刺すためにこの手に握られているのだ。
ああ、ならば行こう。絶望の彼方へ。逃避と、放棄と言えるかもしれない。だがこれが私の道だ。犯したことには罰で答える。究極の罰、私の死を以って償おう。
窓から差し込む月の光は私に届かない。けれども、握りしめたナイフは確かにきらりと光ったような気がした。
美しい笑顔は、もうどこにもなかった。
その笑顔は優しい朝日のように、私の心を溶かした。
うちの大家さんと話す彼女を、私は隠れて見ていた。彼女は今日からアパートに引っ越すことになったらしい。世間知らずな田舎少女…という雰囲気。しかしながら人を惹きつける魅力がある。私は思わずシャッターを切った。
幸運なことに彼女の部屋は私のすぐ下の102号室。その気になれば、純朴な少女の生活音くらい聞き放題である。
って、何を考えてるんだ私は!そんな犯罪まがいの行為していいわけがない。私はそこまで下卑た人間じゃない―――いや、"そうなってはならない"のだ。
私の母親はいわゆるホームレスで、もちろん私もホームレスとして生まれた。父親は知らない。はした金のために親が体を売ったとか、そんなところだろう。しかし、母は私を捨てることだけはしなかったので、今でも感謝している。
路上は寒かった。黒ずみ穴の開いた服、使い古された毛布と粗末なブルーシートの小屋では雨風など防げない。それでも私がここまで育ったのは幸運というほかない。
ホームレスにとっての問題は衣食住に止まらない。
例えば、傷病の治療である。残飯漁りやごみ漁りのため、私たちは必然的に手を汚さなければならない。時に排泄物や吐しゃ物だろうと手を突っ込む覚悟をも必要とするのがホームレスの生活だ。
そんな生活をしていれば、当然けがや感染症に繋がる。それらは、免疫力の落ちた体を確実に破壊していく。それが私の母の死に様であった。
母が死んだのは私が13歳(これは司法解剖と私の記憶による推定だ)になろうとしていたころだ。一般的には中学生くらいの時期である。そのころには私もホームレスの生活が板についていたので、生き方については十分わかっていた。母に教えてもらった知識を使いながら、拾ってきた本を読んだりもした。
しかし、"わかっていること"と"できること"は違う。それを突きつけられたのは母の死から一か月ほど後だったと思う。
私の体を理不尽な暴力が襲った。同じホームレスの男による略奪である。一般的にはホームレス内にもコミュニティがあり、仲間内で略奪を働いたり盗みを行ったりすることはご法度なのだが、母を失った非力な私に小さな社会は容赦がなかった。
殴られ、蹴られ、気を失い眠りにつく。抗うすべもなく、ただひたすらに蹂躙され、僅かな財産すらも奪われた。母の形見の毛布でさえも。
「このまま目が覚めなければいいのに」
全ての気力を削がれ、そんな気持ちを抱えながら目を閉じた私。次の瞬間目に入ったのは、暗い曇天ではなく眩い照明だった。
「ここは…?」
この世の物とは思えないふわふわとしたものに包まれながら、私は身を起こす。ぎしりと鳴ったその寝床は薄い桃色。なんと、これはおとぎ話の産物"ベッド"である。冷たい床から数十センチ離れた場所に私は寝ているのだ。
きっと私はあのまま死んで、天国に来たのだろう。母もどこかにいるのだろうか。傷だらけ痣だらけの体を見せたら、きっと悲しむだろうな。
そう思い自分の体を見てみる。
見慣れない服を着ている。そして、全身には傷の代わりに絆創膏や湿布が貼られている。腕を動かしてみると、傷はまだ痛んだ。
「あら、目が覚めたのね!」
ドアを開け出てきたのは、優しそうな雰囲気の女性だった。ホームレス連中と違って、しっかりとした服に身を包み、健康的な肌の色をしている。花のような香りをふわりと漂わせる。笑顔の似合う女性だった。
「あなたは、誰ですか」
私は睨みつけるようにその人を見た。ホームレスにとって一般市民とは敵である。私たちは日陰者。社会とは隔絶された存在でなければならない。同じ人間として扱われることすらない、ベクトルの違う存在だからだ。
「私はあなたの味方よ」
彼女は迷いなくそう答えた。私への敵意や忌避など全く感じさせない。同時に私の中にあった懐疑心は少しずつほどけていった。
ここは彼女の家で、私は気を失い倒れていたところを買い物帰りの彼女に救われたらしい。23歳独身で、この家は親から受け継いだアパートだという。
私はこれまでのことをすべて話した。長々とした身の上話を彼女は親身になって聞いてくれた。ときどき、言葉を詰まらせた私を撫でてくれることもあった。
「本当に、大変だったのね…」
彼女の表情は曇りを含んだものに変わっていった。初対面の笑顔が印象的だったからこそ、その暗く苦しい表情は痛々しかった。美しい花を踏みにじってしまったような、後悔にも似た気持ちが心を締めつける。
そして、次に彼女が放った言葉は私の人生を変えることになる。
「私の家族になる、なんてどうかな?」
こうして物語は始まった。
当たり前のことだが、ホームレスの子である私には戸籍がなかった。もちろん出生届さえ出されていない。そのため、私が生きるにはまず役所で様々な手続きをする必要があった。現代社会では、身分を証明できないと大幅に行動が制限されるからだ。
窓口にいた男性は、親切に様々な手続きを手伝ってくれた。役所は私のような人間に力を貸すことはないと思っていたので、これには驚いた。
途方もない手間がかかっただろう。手続き開始から1年弱、大家さんと彼の尽力の甲斐あって、私は何とか他界した母との血縁関係を証明するに至り、住民票も作ることができた。
―――とはいえ、働くことはとても難しい。
ホームレス上がりの私には、ハングリー精神こそあれどまともな知恵も力もありはしない。義務教育さえ満足に受けていない私は、とりあえず大家さんに養われることに。
アパートの管理を手伝い、近所のボランティアに参加したりと社会勉強をすること4年。途中からは夜間中学にも通い始めて、私は18歳になった。
「私、専門学校に行きます」
それは、清算の決意だった。
「やりたいこと、見つかったのね」
いつも通りの、暖かい言葉だった。
選んだのは情報系の専門学校。実用的で、就職にも近づけるだろうと見込んでの選択だった。バイト代を貯めて買った機材を使いながら、私は必死に勉強した。
2年後、何事もなく卒業。私は元から要領のいい方だったらしく、軌道に乗り始めてからはとんとん拍子に事が進んだ。
そして3年、21歳の現在に至る。フリーで仕事を受け、ホームページの制作や管理、技術講師としての職業をオンラインでこなすまでになった。
ここまで私が生活を取り戻せたのも、あの日私を見つけ救ってくれた大家さんのおかげである。私と大家さんの尊厳とその恩に懸けて、同じアパートの住人の生活音を盗聴したり襲ったりなんてできないのだ。
引っ越してきたあの子の登場により急展開を見せた私の物語だが、大家さんとの邂逅から今まで、私の人生は比較的順調に進んでいたと思う。
学校に通い、様々な人と関わり、職を手に入れ自立を果たした。一般的に幸せと言っても過言ではない水準の生活をしているし、事実私は幸せだ。
この生活がずっと続いてほしい。
そんな思いすらも簡単に崩れ去るということを、10年前の私ならよく知っていたはずなのに。
5月。その日は、いつもとは違うスーパーで買い物をした。近所のスーパーがリニューアル準備中で、せっかくならと市中心部の大型スーパーまで出向くことになったのだ。
普段は目にしない珍しい品々に心を踊らせ、予定より1000円近く多い買い物をしてしまったが後悔はない。むしろ多幸感を感じながら、私は市内を歩いていた。
見慣れないが、変わったものも特にない帰り道。すたすた歩いていると、物々しい人だかりが目に飛び込んできた。何人かの救急隊員と警察が、何かを取り囲んでヒソヒソと話している。
なにか事件でもあったのだろうか?いずれにせよ、私が関わることではない。横を素通りしようとしたその時だった。
「行き倒れですね」
足が止まる。
耳に入ってきたこの一言は、私にとって極めて重いものだった。人々の背中の奥に、母の姿が透けて見える。
…よく考えてみると、このあたりは私が以前暮らしていた場所だ。陽の当たる場所から見える景色は、人目を避けたあの日とは違って見えていたのだ。ここは確かに私の出身地で、すこし離れたあたりにホームレスの集落があった。あそこには喫茶店の生ゴミがあったとか、裏のビルには外に蛇口があったとか、芋づる式に記憶が掘り出される。もしかしたらその行き倒れも、私が知っている誰かかもしれない。私は買ったアイスの存在も忘れてその人だかりに吸い寄せられていった。
「酒で臓器がやられてるよ」
忍び足で、息を殺して。緊張感のある空気が体を固め、体はプルプルと震えていた。
「もう少し遅かったら腐ってただろうな」
声が段々とクリアになっていく。高鳴る鼓動がうるさく響く。「ここで止まれ」と警告するように、あるいは私を急かすように。
「こいつはかなりのベテランだぞ」
ともすればその背中に触れそうな近さ。ほんのすこしの距離が崩れてしまわぬよう、慎重に。爪先立ちで、壁を超えて。隠れて見えなかったその奥の物が、徐々に姿を表す…
一瞬。
目が合う。
鼓動が止まる。
血液が凍る。
耳鳴りが満ちる。
鈍い痛みが、また。
全てが吐き出そうで。
全てが不確かになって。
世界が反転した。
直後、無数の穴が私を捉えた。どうやら私は無意識に声を出していたらしい。ただ一点に集められた視線は、鋭い針のように私を突き刺した。
一瞬を引き延ばした感覚が、加速度をつけて現実へと引き戻される。世界が加速する。止まった鼓動が、血が動き出し、体が痛み出した。
顔の真ん中から、一際大きな穴が新たに開かれもぞもぞと動く。言葉は私の耳には届かなかった。何もわからない。立ち尽くすしかなかった。
すると一つ、また一つと生まれて動き出す。中には立ち上がって手を伸ばす者までいる。思考はまだ停止したまま。
激しい運動のあとのように、呼吸が荒くなる。視界が狭くなり、脳が圧迫される感覚。頭痛にも似た収縮のプロセスに、私の体は無意識に動き出していた。
私は走った。
何も考えられなかった。
ただ、あの中にぽっかりと空いた2つの底なし穴だけが私の心を縛り付けていた。いつか刻まれた古傷とともに、私の心は弱く脆いあの日へと逆行していった。
私はまだ走っていた。
灰色に支配された、虚無の世界。いつもよりぐっと近い真っ黒の地面は、踏みしめるたびにしっかりとした硬さを感じさせる。見通しは良すぎるくらいで、地平線は途切れることなく私を囲っていた。
荷物は何もない。薄汚れた昔日を思い出すぼろぼろの服を来て、目的もなくひたすら走っていた。足音も、風を切る音も、寒さも暖かさも感じない。
「なんで、私はこんなにも必死なんだろう?」
走り出した場所も、ゴールも分からない。ただ、がむしゃらに脚を動かす。
どこからともなく現れたのは、あの頃の大家さんだ。安らかな気持ちが心を満たす。世界はセピア色と暖気に包まれた。私の肌に初めて触れた、「熱」という感覚。
私は一旦走るのをやめて、歩くことにした。大家さんは少し先にいるが、彼女はきっと私から離れることはない。それに、ずっと走り続けられるわけはない。ここで休まなければ、いつかきっと倒れてしまう。
「私、頑張りました」
期待した。彼女は私を褒めてくれるだろうか、慰めてくれるだろうか。それとも、この先のために勇気づけてくれるのだろうか?
私は少し上を見つめる。彼女の優しい笑顔を見るために。
「ひっ…!」
その顔に温もりはなかった。世界が深い藍に染まる。
「他人を蹴落として、奪って、逃げてきた。そうでしょう?」
底のない暗黒。吸い込まれそうな目に、私への気遣いや愛情はない。軽蔑や嫌悪もない。ただただ"無"だった。
私はまた走り出す。恐怖と不安にまみれながら、脚の動く限りひたすらに。
先はまだ見えなかった。振り返る勇気も、余裕もなかった。深い海の底のような視界は重苦しく、私を押し潰そうとしている。
しばらく走った。意味もなく、理由もなく、しまいには唯一持っていた気力さえ尽き果てた。棒のようになった足とオーバーヒートした体を投げ出し、地面に激突する。これは痛かった。
痛みは一度では終わらなかった。
はるか昔の、しかしよく覚えている感覚。頭を、胴を、腕を、腹を、掴む叩く殴る蹴る。体中を襲う強大な暴威。何度衝撃が襲っても、私の体は動かない。不意に涙がこぼれた。
一通りの蹂躙が終わると、力の権化は地に伏す私を離れ、"また"走っていった。いつの間にか赤錆びた世界の先へ、黒い影は向かっていく。
よく見ると、その体は目も当てられないほどにみすぼらしかった。いや、朽ち果てていたと言ったほうが正しいかもしれない。生物の体とは思えないほどに、不完全な存在だった。地面と垂直に立ち、走る彼の姿はとても弱弱しかった。
少しするとそれは見えなくなった。それは遠く離れたからでも、地平線に飲まれたからでもない。彼の体は地面に平行になった。
地面が揺れている。大勢の人間が駆けてきた。きっと、あの影を助けるためだろう。彼はもう一人では立てそうになかった。誰の手助けもなければきっと死んでしまう。適切な治療が必要だった。
轟音はどんどん近づいてくる。揺れは激しさを増し、傷ついた体に響いた。世界を包む赤茶色がだんだんと眩しいほどの橙色に変わる。それは夜明けの合図だった。
人々が手を貸せば、あの人はきっとまた走り出すことができる。小さな希望がこの地平を照らし出したように思えた。
しかし大群が止まったのは、彼ではなく私の周りだった。戸惑う私にはお構いなしに、大量の人影が私を囲う。
足音が止み、静寂が訪れた。影たちはただ突っ立って私を見下ろす。凹凸のない平たい頭がうなだれる様子は、内側から見ている私には不気味に見える。
私ではなく、あの人を。
体に力が入らない中、絞り出すように声を出し…
突然、かき消された。
静寂は何の前触れもなく切り裂かれ、耳を塞ぎたくなるほどの騒音が響く。それらは黒い影の中にぽっかりとあいた、溶岩で満たされたような洞窟たちから発されていた。
影たちは口々に好きなことを喋っているようだ。しかし、あまりの数にそれぞれを言葉として認識することは難しい。ただ一つわかるのは、それらは私に対して肯定的な意見を叫んでいるということだ。
私は大丈夫、あの人を先に。
いくら声を上げても、祈りは届かない。私は必死に叫び、そして気付いた。
あれほど痛めつけられた体が完治している。声を出すことすらままならなかったはずなのに、今では叫び、立ち上がることさえできそうだ。痛みも傷もどこかへ消え、代わりに体の内側から湧き上がる炎のようなものを感じる。それは間違いなく"正"のエネルギーであったが、同時に奇妙な違和感をも覚えるものであった。
なんにせよ、傷が癒えて元気になったということに間違いはない。私は立ち上がり、騒がしい集団をかき分け、彼のもとに向かうことにした。
そうして、一人目の影に接触したときだった。
今まで棒立ちしたままだった彼らが初めて行動に出た。肩に触れ押しのけようとした腕が掴まれた。この世のものとは思えない力で、ピクリとも動かせない。
暴れようにも、片腕が縛られた状態でできることは少なかった。影を殴ろうと試みるも、虚空を殴るような感触が帰ってくるのみだ。まだ自由な両足を使いなんとか右腕の自由を取り戻そうと、懸命に地を蹴った。
「ひゃうっ!」
今度は左脚が別の影に触れてしまった。すると、浮遊感と共に脚がガッチリと固定される。もちろん動かすことは叶わなかった。かろうじて動かせる左腕と右脚を失うわけにはいかないので、少しの間暴れずに様子を見ることにした。
私が抵抗しないとわかると、手足を掴む2つの影はその腕を上げ始めた。私の体もより高い場所へと上がっていく。状況を理解できないでいるうちに、いつの間にか私の四肢は影たちに支えられ神輿でも担ぐかのような形になっていた。
上からだと、先程の男がよりはっきりと見える。彼はうつ伏せのまま、体を震わせながら、きらきらと潤んだ目でこちらを見ている。助けを求めているのは言うまでもない。
痛かった。癒えた体でなく、もっと奥の奥にあるなにかが。なぜ、どうしてと、意味のない問いが求めるのは、平等な救い。
影たちは未だ騒ぐのをやめず、私を何処かに運び出した。動こうにも、先程より多くの腕が体を縫い付けるように抑え込んで離さない。
狂った太陽はいつの間にか頭上へと登り、ギラギラと輝きながら世界を燃えるような緋色で染めている。這いつくばる男と、担ぎ上げられた少女を照らして。
目覚めた私に纏わりついていたのは、じっとりとした嫌な脂汗だった。シャワーも浴びずに寝てしまったらしい。身を起こすと、ぎしりと鳴ったのはベッド以上に私の体だった。
あれは夢だった。大家さんやあの男が出てきて、よく分からない世界が色とりどりに明滅して。体も、心も、あの痛みをはっきり覚えている。
ふと思い立ち、自分の体を見てみる。
出かけたままの服の袖を捲る。未だ掴まれた感触が消えない右腕には、くっきりと痕が残っていた。脚にも、体にも、実際に掴まれたような痕跡があった。
体に氷を詰められたかのような悪寒に、全身がぶるりと震える。
「私…何をされたの…?」
「『された』?笑わせるな」
誰が、どこから発しているのか。地の底から響いてくるような、低く重い声だった。その原動力が負の感情であるということは容易に理解できた。私に対する、深い憎悪と怨恨の念だ。
どす黒いエネルギーに晒された私の頭に、さっきまで消えかけていた感情が蘇る。走馬灯のように"二つ"の男が重なり合う情景が、私の心を揺さぶる。
もしかしたら、私は。
私のせいで、彼は。
「俺はお前に殺されたんだ」
……違う。私は誰も殺してなんていない。
「お前のせいで俺は」
…違う。私は悪くない。
「お前が全部奪った!」
「違う!!!!!!」
たまらず枕を投げつけた。どことか、誰とか、そういうものは定まらなかった。ただ、泣きそうになる感情の濁流に耐えかねて、体が勝手に動き出したのだった。
カチッ。
それが当たったのは、非常用にと備えておいた小型ラジオ。押されたスイッチは、停電時用のライトだ。ろうそくの炎のような暖かい光が室内に立ち込める。
その光の行く先へ、視線は誘われるように導かれる。たった一つのLEDライトが照らし出したのは、窓とは反対に位置しているクローゼットだ。私の体は勝手に動いた。何か他の存在に意思をもって操られているのではないかというくらい、何の根拠もない直感的行動だった。
ゆっくりと、音を立てることなく慎重に扉を開ける。炎に照らされ、私を導いた者の正体は…
「…嗚呼」
いつか撮った、あの子の笑顔だった。
午前2時。崩壊していく世界に、天啓が舞い降りた瞬間であった。
「あの…先日引っ越してきた方、ですよね?」
初めてのアプローチ。なるべく不審にならないよう、冷静に、慎重に。挨拶が遅れたことへの申し訳なさという印象を与えるよう、下手に出ることを意識する。
「はい!もしかして、202号室の方ですか?」
天使、いや女神?受け答え一つとっても愛らしい。屈託のないその笑顔が私を狂わせる。私の正体をすぐに察したのは、既に私以外の住民と会ったからなのか、それとも大家さんに説明されたからか。経緯はどうであれ、私という存在に多少の興味を持ってくれていると思うと、素直に嬉しかった。
「よくお分かりで…。ここまでご挨拶できずすみません」
「いえいえ、お会いできてよかったです!これからもよろしくお願いします!」
お互いに笑顔で軽く頭を下げる。お互いに、と言っても、その笑顔の質には天と地ほどの差があったが。
ともかく、これでファーストコンタクトは上々。一切怪しまれることなく、"普通の隣人"を演じることができた。今日の目標その1は達成である。
それでは、目標その2へ進もう。私は手に提げた紙袋から、一つの瓶を取り出す。
「これ、ハーバリウム…お近づきの印に。」
「わぁ、ありがとうございます!とってもかわいいですね」
宝石でも受け取ったかのように、丁寧に大事そうに手を添え眺める彼女。
それは、大きめのジャムの瓶で作った簡素なハーバリウム。爽やかな緑の葉の中心に鎮座するのは、桃色のうさぎ。これこそが最も重要な仕掛けである。
くりっとした二つの黒目は、生気を感じさせないのにすべてを見透かしているかのようだ。事実、彼女の眼はこれからすべてを見透かす第三の目として働いてくれるのだが。
「気に入っていただけたら嬉しいです。では…」
頭を下げ、軽く手を振りながら自室へ向かう。彼女は同じように手を振って、私のことを見つめてくれていた。
去り際まで笑顔と礼儀を絶やさない、予想通りの人格者だった。
自宅。目の前にはモニター。普段の仕事で使うこのモニターに映し出されているのは、コードの羅列ではなく色を持った映像だ。ここの真下、102号室内を撮影している。
桃色うさぎの両の目はこのためにある。怪しまれないように仕込んだ小型の太陽電池で半永久的に動く、私だけの監視カメラだ。
現在、昼の12時過ぎ。つまりはごはんの時間である。あの子の貴重な食事シーンを目に焼き付けるために(と言っても、無線で送られた映像は自動で録画されているのだが)、こうしてパソコンの目の前で待機しているのだ。
今日のメニューは、ネギがたっぷり乗った豚丼とカット野菜のサラダ。豚丼のほうはチェーン店のテイクアウトらしいので、とりあえず私も〇verで頼んでおいた。サラダのほうは、ワカメを乗せてチョレギサラダにしてある。カット野菜については同じようなものがうちにもあるが、同じドレッシングがないので妥協してノンオイルの青じそにしよう。
「いただきます」とはっきり聞こえそうなくらいにしっかり手を合わせ彼女は食べ始める。ハーバリウムを使ったことでマイクは諦めざるを得なかったのだが、やはり多少強引にでもつけておくべきだったと後悔。
銀色のスプーンに彼女のしなやかな指が絡みつく。あの美しい手が私だけに触れてくれるのだとしたら、それはどんなに素敵なことだろう…なんて妄想してしまう。そして彼女はスプーンに乗った一口を頬張る。その姿はCMの女優など比ではないくらいに魅力的で、緩んだ頬からは極上の味が香りと共に鮮明に伝わってくる。頼んだ豚丼への期待も膨らむばかりだ。
というか、美少女がスプーンを咥えてニコニコしてるのって、なんというか、その……『エロい』。口からスプーンが抜き取られ、もぐもぐと口を動かし、幸せを噛みしめてからごっくんと飲み込む。これじゃまるでフ■■
半分ほど食べ進めてから、彼女はスプーンからフォークへと持ち替えサラダに手を伸ばす。私は健康意識が高い方ではないが、彼女はどうなのだろうか?このサラダは果たして罪悪感の中和なのか、真面目に栄養バランスを考えた結果なのか…。
私は合わせるように用意したサラダを食べ始める。味は違えど、同じ野菜を食べて同じ喜びを噛みしめることで、少しでも彼女に近づいたと思いたかった。私の空腹を満たすのは、食べた物自体ではなくその感情であった。
私の豚丼が届いた頃に、食事は終わった。録画開始から数時間で既にこの取れ高、これから私はどれだけの幸せを彼女に頂けるのだろうか。考えるだけで気持ちは弾み、体が軽くなったような気さえしてくる。
しかし、悟られてはいけない。知らないうちに自分の生活が筒抜けになっていたと知ったら、もちろんいい気はしないだろう。これは私だけの密やかな楽しみとして、胸の奥にしまっておかねばならないのだ。
それから一ヶ月と少しが過ぎた。カメラは未だバレずに稼働したままだ。朝に昼に夜に、寝起きの、リラックス中の、お風呂上がりのあの子を見る生活。彼女の日々はどんな場面を切り取っても絵になった。芸術そのものと言っても過言ではないとさえ思う。
しかし最近はなんだか満足できない。いや、この覗き見自体はとても有意義な行為で、私は計り知れない活力をもらっていることは確かなのだ。にもかかわらず、何か足りない、もっと欲しい、そんな漠然とした欲求が心の中に渦巻いている。
風呂上がりの彼女を見て、ふと思う。シャンプーは何を使っているんだろう?ボディソープは何を使っているんだろう?
洗顔フォームは、化粧水は、入浴剤は?どんな順番で、どのくらいの時間をかけて、どんなふうに体を洗っているの?
知りたい。知りたい。知りたい。このままじゃいられない。部屋の一点を見ているだけじゃ足りない。彼女をもっと、深く、詳細に知りたい。知り尽くして、突き詰めて、その先でまた知りたい。
その夜は欲望ばかりが瞼の裏にちらついて、よく眠れなかった。蒸すような暑さがその影を見せ始める7月のことだった。
翌朝。寝不足の体を無理やり動かして、顔を洗って、着替えを済ませる。時刻は7時を回ったところだ。
今日は水曜日、プラゴミの日である。一週間に一度のこの日を逃せばまた7日間ゴミと共に暮らすことになるため、逃すわけにはいかない。
外に出ると、私は思わず目を覆った。地面に反射した強い日差しが、寝起きの私の無防備な目に直撃してしまったのだ。朝にもかかわらずもうだいぶ暖かく、明るくなってきたなあ、としみじみ思う。
よたよたと外廊下を歩いて階段を降り、集積所のほうに目を向けると、そこにはあの子がいた。ゴミ出しを済ませた彼女は、最後までこちらに気付くことなく、小さなバッグと共に出かけてしまった。離れていくのを見届けてから、私も階段を降りきって袋を置き足を止める。
目の前には、先ほど出されたばかりの彼女のゴミ袋。
プラゴミというのは生活を如実に反映する。今の時代ほとんどの商品はプラスチックで包装されているからだ。そこには商品名、原材料など様々な情報が書かれている。食べているもの、使っているもの、生活サイクルなど推定できる情報は少し考えるだけでも売るほど見つかる。目の前の袋は昨夜の私の悶々とした気持ちを解消するのにもってこいの宝箱と言っても過言ではない。幸い彼女はもう部屋に戻っているので、ここで拝借しても何の問題もない。一度家に持って帰ってしまえば、誰にもバレることなく中身を漁ることができる。周囲に人はいない。そもそもいらないものとして捨てられたのだから、私が拾って再利用しても何の問題もない…
まあ、なんというか、つまり私はそれを手に取った。
私の心は踊っていた。例えるならそう、クリスマスプレゼントをもらった子供はこういう気持ちになるのだろうと思った。私が初めてクリスマスプレゼントを受け取ったのは14歳のときで、無邪気な心で喜ぶということはなかったのだが。
中にはどんなものが入っているだろう?外から見た限りでは冷凍食品の袋があったが、きっとスキンケア用品の包装なんかもあるに違いない。もしかしたらすこしアダルトなものも入っていたり、するかもしれない。期待に満ちた軽い足取りが、階段の上を跳ねるように駆けた。
部屋に戻った私は、宝の山を目前に震えていた。それはもちろん、恐怖ではなく極度の期待からである。これで彼女のことをもっと深く知ることができる。これまで以上に、彼女と同じ物を食べて、使って、愛でることができる。夢は広がるばかりだ。
ぎゅっと結ばれた袋を汗のにじむ手でするりするりとほどくと、袋は中のごみの自重ではらりと開いた。まるで手慣れた遊女のように、蠱惑的な仕草だ。腹立たしい。たかがゴミの分際でここまで私を昂らせやがって。いいだろう、ならばその挑発に乗ってやろうと、熱にあてられた体を乗り出して中身を物色する。
それはまさに財宝と言っていい代物だった。
昨日の夜思い描いたシャンプーやリンスなど目ではない。数多の食品包装の中に、服のタグが、ナプキンの袋が、砂の中の砂金のように紛れているのだ。
私は息をするのも忘れてひたすらに漁り続けた。手を入れるたび新しい発見が手に入り、彼女の解像度がぐんぐん上がっていく。目薬をさす姿、新しいメイク道具を試す姿、生理に苦しむ姿…そのどれもが鮮明に浮かび上がり、きっとこんな表情をするんだろうという妄想でさらに幸せが増した。
全て確認し終わるのにそう長い時間は要さなかった。宝の山は崩れ落ち、後には少しのゴミと大量の金銀財宝が残った。結果を見れば、これは当初の想像以上の収穫だと言えるだろう。
たった一つの袋から、ここまで彼女を見てきた一ヶ月以上の情報を得ることができた。それも今までとは違った側面からの情報を。このゴミ漁りは、部屋の録画とともに、それからの習慣になった。
暑さが本領を発揮し、身を焼くような照り返しが地表を歪ませる8月。私の日課はまだ続いている。気づけばコレクションも増え、102号室の録画開始からは三ヶ月が過ぎた。満たされない心を満たすため、あらゆる手段を尽くしてきた。
そして今日も、私は"満たされない"病を再発していた。
後悔と不安に縛られた私を救った、偽りの炎と偶像。見ていたいという欲の先にあった知りたいという好奇心のように、今私が抱いているのは嫉妬心であった。
彼女に合わせ一足遅れて外に出ると、あの子は下で他の住民と話している。あれはたしか101号室の妹だ。内容までは聞こえないが、二人とも輝く目で、ときおり笑みをこぼしながら談笑している。
虫のような、蛇のような、どろりとした何かが私の中で蠢く。全身を這い回るような衝動に、逃げ出したくなる。その脚を抑えるため、私は倒れ込むような勢いで家に戻った。
…あの場所にいるのが私なら。
その日もまた、よく眠れなかった。最近は夜がやけに長い。
鏡を前に、最後の確認をする。
寝癖もない。控えめながらトレンドを抑えた服。準備は万全だ。
あの子の隣にいたいと願うのならば、まずは話しかけるところからだ。思えば、ハーバリウムを渡したあの日から一度も言葉を交わしていない。当然距離など縮まらないわけだ。初歩に戻って、地道に進んでいこう。
私は気を引き締めてドアノブを握る。彼女がこの時間に外に出るのは確認済みだ。合わせて家を出れば、話しかけられるタイミングは確実にある。
外廊下から階段を降り、何気ない顔で102号室の方を見る。手前から二つ目、のっぺりとした白い扉から飛び出る銀色のレバーが音を立てて傾いた。開いていく隙間から、ゆっくりと人影が見え始める。私は意を決して足を踏み出した――
気づけば私は階段に座り込んでいた。
怖かった。顔を合わせたらなんて言おうか、そもそも答えてくれるかさえわからない。3ヶ月近く会っていない同居人の世間話など彼女にとってはなんの意味もない。そんな事を考えると、私の体は自然にその場を離れ、帰る道へと勝手に足が向かっていた。
外廊下の柵の隙間から恐る恐る外を見てみる。あの子は私に気付くことなく歩いて行ってしまった。二人の距離は、近づくどころか一歩遠のいてしまったように感じる。私は沈む気分をどうにもできず、ただ家に帰るしかなかった。
その日、私は外に出てはあの子の帰りを待ち、そして家に戻るということを繰り返していた。明日、また明日と先延ばしにするより、今日から頑張ろうという決意からの行動だった。
何度目になるか、最初に外に出てから4時間ほどたった午後2時、彼女は帰ってきた。今日最後になるであろうこのチャンス、絶対に逃がせない。私は急いで階段を降り、身を隠しながらちらりと道路のほうを見る。
あの子はこちらにすたすた歩いてきている。大丈夫、心の準備はできている。第一声は「お久しぶりです」、最初の話題は猛暑に言及する世間話。問題ない。偶然を装ってここから飛び出し、そのまま図々しく話してやれ。
深く、しかし静かに息を整え、胸をさする。私ならできる。今日は私が生まれ変わる日。決意は変わらない。もっと二人の距離を近づけるため、もっと二人の関係を進展させるため、今日この瞬間の会話が重要になる。
だから私の体よ、早く動け。
何をしているのか。近づくあの子を見ていながら、私の体はこの場から動いてはくれなかった。今しかない、頭ではそう分かっているのに、足の裏が縫い付けられたように動かない。
やっとのことで進みだしたとき、彼女はすでにドアノブに手をかけていた。
「あっ、ぁ」
あれだけ復唱した言葉も、目の前にするとなぜか言えない。無意味なうめきは誰にも届かず消えていった。
一日目、結局私の計画は失敗に終わった。
今日こそは。
二日目、私の計画は失敗に終わった。
絶対に逃げない。
三日目、失敗に終わった。
早くしなければ。
四日目、また終わった。
五日目。
六日目。
七日目。
八日目。
何度繰り返す?
私は自分に問う。
同じ日々を、同じ過ちを、同じ後悔を。
あの肌に触れ、指を絡め、頬に熱いキスをして微笑み合い、そっと愛の言葉を囁く。二人の体を重ね、確かめ合う、そんな昏い欲望が渦を巻き、私の身を焦がしていた。
彼女に近づきたい。
笑顔を、恥じらいを、照れ隠しを、悲しみを、怒りを、恐怖を、愛を、すべて私のモノにしたい。誰にだって渡したくない。
気付けば私は外へ出ていた。8月23日、まだ暖気の残る熱帯夜。寝巻しか着ていないが、それでも少し暑いくらいの気温だ。
サンダルをぺたぺたとならし、ふらふらと階段を下りる。そのまま壁伝いに歩いて、柵を乗り越え、窓に手を当てる。意外にも鍵は開いていた。
すぅすぅと可愛らしい吐息が聞こえる。無防備な状態にある彼女は、私に気付くことなく眠り続けていた。リラックスした寝顔は見ているだけで私の心を満たしてくれる。やはり映像よりも直に見るのがいい。自らの目だけでなく、耳や肌で感じるこの感覚が大事なのだ。
ベッドの横に膝をつき、細い首筋に触れる。
大丈夫。もうすぐ私のモノにしてあげる。
手に持ったナイフを上に掲げると、月の光を反射してきらりと光彩を放った。これで私たちは永遠に、一緒にいられるね。
待って
私、今ナイフを持っている?いつ手に取った?そもそもこれは誰の物?眠っていた脳が急速に覚醒していく。夢から醒めたかのような、世界が開いた、そんな感覚。
私は家を出て、窓からここに入った?ありえない。常識的に考えてそれは犯罪。
いや、まず私は彼女の部屋を盗撮した。まぎれもない犯罪ではないのか?ゴミまで漁って、ストーカーと何ら変わらない。
そして今私はナイフを持って何をしようとした?彼女を殺そうとした。自分のモノにするなんて身勝手な理由で。
自分が自分ではないみたい、そういう表現がある。まさにそれだった。今までした行動が自分でも信じられない。正気な人間なら絶対にとらない犯罪行為の数々、正常な精神状態とは言えない依存心理。目の前の純真無垢な少女を崇拝、あるいは信仰するように、縋っていた。不安や後悔、そういう自分の弱さを受け入れてもらうために。
気持ち悪い。激しい自己嫌悪。なぜ今まで気が付かなかったのか。理解できない。ただ一つ確かなのは、私は許されないことをしたということ。
一人の人間のプライバシーを脅かし、傷つけ、命まで奪おうとしたこと。そして脳裏によぎるのは、一人の男性。私の幼少期に終わりを告げ、私の心を縛り続けていた今は亡き人間。
二人の人間を殺したも、同然。
全身の力が抜けるのを感じた。呼吸をするのさえ忘れてしまいそうなほどに、心がスッと抜けてしまった。
やがて、窓から温い風が吹き込んできた。肌を撫でる不快な感触に私の意識は揺られ、同時に意識もまたはっきりしてきた。
とりあえず、家に戻ろう。
すっかり重くなってしまった扉を音もなく閉める。私は靴を脱ぎ、そのまま壁にもたれかかった。
これからどうすればいいのだろう。
私が彼女に与えた損害は計り知れない。私がしたことをすべて知ったら、軽蔑や嫌悪では済まない。どう転ぶにせよ、これからこのアパートで暮らしていくこともできないだろう。
大家さんに申し訳ないとも思った。私を救い、育ててくれた第二の母親である彼女に合わせる顔がない。
様々な心配事が、浮かんでは消えていく。考えるのも疲れてきた。もう取り返しのつかないところにまで来てしまったという感覚があった。諦観と共に胸に広がったのは、もはや清々しいという感情だった。
そう、取り返しがつかない。謝罪、贖罪、いろいろ言葉はあるが、結局のところ取り返しがつかない。
ならばいっそ、消えてしまおうか?
罪が消えることはないが、私はいつだって消えてしまえる。私は特別な才能もない凡人、いやそれ以下。たまたま人に手を差し伸べてもらっただけの掃き溜めのゴミだ。
あの男への禊も、大家さんへの恩義も、彼女への愛も、罪も、私の感情。死んでしまえば、全て無になる。
楽だと思った。少なくとも、今苦しんで生きていくよりはよっぽど幸せな道であると。
幸い手元にはナイフがある。運命とさえ思えた。このナイフはあの子でなく、私を刺すためにこの手に握られているのだ。
ああ、ならば行こう。絶望の彼方へ。逃避と、放棄と言えるかもしれない。だがこれが私の道だ。犯したことには罰で答える。究極の罰、私の死を以って償おう。
窓から差し込む月の光は私に届かない。けれども、握りしめたナイフは確かにきらりと光ったような気がした。
美しい笑顔は、もうどこにもなかった。
上記のシナリオですが、コメント欄で考察されていたものを元にいくつか変更した部分があるため、どこかで矛盾が生じるかもしれません。気付いたら直して修正履歴に置いておきます。
来期はアーク編後半仕様にリニューアルしてお届けするつもりです。
→来期、また来期と追加するの不安になってきましたね…
というわけで今後のSS及びメインストーリーの更新については考え中です。一つ考えているのは、まだ公開していないアーク編後半と疾走ちゃんSSの関係のようにSSとストーリー概要・ページ更新をセットでやるという方式。とりあえず検討しておくとして、今後もこの記事やシャドバは続ける予定です。
→来期、また来期と追加するの不安になってきましたね…
というわけで今後のSS及びメインストーリーの更新については考え中です。一つ考えているのは、まだ公開していないアーク編後半と疾走ちゃんSSの関係のようにSSとストーリー概要・ページ更新をセットでやるという方式。とりあえず検討しておくとして、今後もこの記事やシャドバは続ける予定です。
概要
以前からアンリミ掌アークネメシスの研究を進めていたのですが、今回やる気と時間的余裕が生まれてきたのでデッキ記事にしておきます。
デッキコンセプトとしては「無限リソース」、勝ち筋は「お前(対戦相手)」としています。
また、このデッキの強さを示す指標ですが、まったくありません。強いて言うならランクマ30戦して勝率6割越えであることくらいです。*1
今からこのデッキを使おうとしている方に言っておきますが、このデッキはランクマと箱開けに適していません。
というのも、真面目に勝とうとすると試合時間がローテ―ション以上に長くなるからです。短時間でMPを盛ったり箱を開けたりということには不向きなデッキということを踏まえたうえで見ていただけると幸いです。
しかしながら、ガチデッキに勝つことができるポテンシャルがあるのも事実。ルムマやグランプリなどで使う分にはちょうどいいのではないかと思います。
デッキコンセプトとしては「無限リソース」、勝ち筋は「お前(対戦相手)」としています。
また、このデッキの強さを示す指標ですが、まったくありません。強いて言うならランクマ30戦して勝率6割越えであることくらいです。*1
今からこのデッキを使おうとしている方に言っておきますが、このデッキはランクマと箱開けに適していません。
というのも、真面目に勝とうとすると試合時間がローテ―ション以上に長くなるからです。短時間でMPを盛ったり箱を開けたりということには不向きなデッキということを踏まえたうえで見ていただけると幸いです。
しかしながら、ガチデッキに勝つことができるポテンシャルがあるのも事実。ルムマやグランプリなどで使う分にはちょうどいいのではないかと思います。
採用カード
主要カード
カード画像 | カード名 | 採用枚数 |
時空の掌握者 | 3 | |
言うまでもありませんが、このデッキの主要カードです。 一枚でたいていのことはできます。 | ||
アーク | 3 | |
言うまでもありませんが、このデッキの主要カードです。 一枚でそこそこの仕事をします。 本編のほうを書くにあたって「アークとは何か」を考えスレでも話題にあげさせていただきました(Part13811)が、結局よくわからなかったのでノアの箱舟モチーフってことにしました。 | ||
招来の大天使 | 3 | |
オーパーツです。 1枚で体力最大値が5UP、これだけでリーサルラインが一気に引きあがります。4ターン目に虚数を置き、5t目に招来進化とかすると葬送的にはつらいんじゃないですかね。4に盤面処理もしてないとリッチ盤面重すぎてハゲるけど。 ディスカやハンドレスには効きます。 | ||
永久の盾・シオン | 3 | |
説明するまでもないコンネメのクソカードです。性能は皆さん知っての通りです。能力ダメカットがこんなに手軽にできていいのか? たまに本体出しもします。 スキン持ってないのでほしいですが、ルムサスキンのためにルピをためなければいけないので引きには行けません。 | ||
虚数物体 | 3 | |
強いダメカです。アークとか置きすぎると盤面を圧迫するので序盤中盤には注意です。人形が置けなくなります。虹の輝きにはご用心。 |
補助カード
マスターコック | 手軽に体力最大値を増やせるのが最大の強み。グランスで直接召喚を防げば面もなんとかなることが多かったので入れました。 |
---|---|
ワールドブレイク | ネクロのせいで渋々入れてるやつでしたが、たまに見るララテイカーやホズミにも有効です。 |
旅の調達 | 対面によってはいらなくなるメタカードもこいつに吸わせれば手札に早変わり。溢れるのを防止することもできるいいカードです。 |
干絶の飢餓・ギルネリーゼ | 2コス6回復です。直接召喚される頃には掌握者に上書きされてることがほとんどです。 |
グランスエンジェル | 葬送対策はもちろんのこと、ゥマにも有効ないいカードです。 |
ミリオンガンズ・アンタニタ | これ一枚でオリシルと招来と虚数とシオンを増やしてギルネをデッキに戻すことができます。何こいつ? |
フェイクウィング・エリーナ | 回復が足りねえ!ってなったので入れてます。終盤デッキが切れそう、でも手札の高コス掌握者が2枚ドローしたら死!というような状況を覆せるほか、エッジが虚数の餌としても使えます。 |
天使の恩寵 | 言わずと知れた強さ。 |
箱庭の追憶・オリヴィエ&シルヴィア | 重いのは相変わらずですが、使ってみるとやっぱりまあまあ強いのでした。 |
エタニティオーダー | パメラ盤面と骸盤面を返せるほか、面ロック対策にもなるので入れてみました。 |
カイザーインサイト | 初手のマリガンやり直しにも使いますが、ストマイで手札を増やして総入れ替えしたりもします。終盤使うと掌握者を引きまくってバトルログが一瞬で埋まります。 |
採用検討枠
ストリングマイスター | 糸をこうしてまーきまき♪人形増やし&破壊数稼ぎもそうですが、カイザーインサイトで戻す枚数を増やしてデッキを回せたりもします。 |
---|---|
職人の一念 | 人形生成かつ手札増やし。ごく稀に武装強化が役に立ちます。 |
極光の天使 | 狂乱に当たるたびハゲてるので入れたいです。検討中。 |
不吉の人形師 | 処理性能がバケモンです。ただ人形軸自体がそこまで強くないのがね… |
アストロウィング・ララミア | 虚数の効果ターン伸ばしができてそこまで腐らないAFということで入れていました。 |
名もなき決意 | ドロソにもなるEP回復です。このイラストシャドバの中でも1,2を争うレベルで好きです。メイシアが好きです。 |
《運命の輪》・スロース | 効果自体は強力ですが、共鳴切り替えがトップドローとアークしかないため使いづらかったので抜きました。 |
パペットボックス | 変身はやっぱり偉いですが、重いです。 |
奏絶の破壊・リーシェナ | ララミアと入れ替えて、白の章を回復や虚数のターン伸ばし、破壊数稼ぎに貢献させるというプランを取っていた時期もありました。そんなにパワー高くないし面が埋まるので抜きました。ことかすさんのリーシェナで抜きました。 |
マリガン
必須キープ
アークのみ。掌握者はあとで来てくれるので返してください。
対面によっては
虚数物体(当てはまる対面が多すぎるので自分で考えてください)
招来の大天使(超越の可能性があるウィッチ、ディスカの可能性があるドラゴン、回復クルトの可能性があるビショ)
永久の盾・シオン(ディスカの可能性があるドラゴン、回復クルトの可能性があるビショ)
たぶんこれ以外にもあると思うんですが無意識にやってるので思い出せません。あとで書き足しておきます。
招来の大天使(超越の可能性があるウィッチ、ディスカの可能性があるドラゴン、回復クルトの可能性があるビショ)
永久の盾・シオン(ディスカの可能性があるドラゴン、回復クルトの可能性があるビショ)
たぶんこれ以外にもあると思うんですが無意識にやってるので思い出せません。あとで書き足しておきます。
プレイング
このデッキは主に相手の動きを受けて耐えることを勝ち筋としているので、プレイングは相手のデッキによって大きく異なります。そのためここではあまり言及しません。
部員はワイよりシャドバが上手なので、ワイのアドバイスがなくても多分大丈夫だと思います。
部員はワイよりシャドバが上手なので、ワイのアドバイスがなくても多分大丈夫だと思います。
相性
対エルフ
ホズミエルフ 有利or不利
リノセウスエルフ 有利
虚数で耐えるだけなので…
対ロイヤル
連携ロイヤル 微有利
リソースについてはこっちのほうが上なので基本的には勝てます。ワーブレ引けずビクブレ取れず死みたいなこともあるので微有利ということで。
ペインレスロイヤル 有利
特に困らないので…
スパルタクスロイヤル 不利
スパルタクスに限らず特殊勝利系にはだいたい無力です。
対ウィッチ
超越 微不利
アーク置いて招来進化してお祈りの虚数。相手は貫通してくる。
秘術 互角
対ドラゴン
庭園ゾーイ 互角〜有利
竜鎧型、インフレ型、クロノス型と様々な形がある(ことを知っているドラジです)。竜鎧は気を抜いてるとやられるのでシオンを適度に使いながら体力最大値を増やす方向に。インフレ型はあて先ケアもありますが、虚数に頼るといいかも。クロノス型に関しては、フォロワー破壊数を増やさないようにしつつ低コス掌握者進化でデッキを減らさないようにするといいです。破壊数を稼ぐと決意がデッキを掘っちゃうので、庭園ゾーイっぽい場合は逆にフォロワーを出さず耐える方向に考えるのもアリだと思います。
対ネクロ
骸 有利
虚数で耐えたりすればまあ負けない相手です。アークや虚数を荒天で割られて泡吹くことがたまにあります。
葬送 微有利
リッチ盤面が重いことを除けば耐えられない打点ではありません。たまにぶん回りの先5に轢かれたりします。
コルネリウス 有利
アークで体力最大値が増えてくれればこっちのもんです。返しにギルネかリヒトの回復&ワーブレをやってしまえば手札カスカスの相手にはまず負けない。
対ヴァンプ
復讐ハンドレス 微有利
人形ギミックとギルネで復讐ハンドレス絶対殺すマン。
ガロム跳躍みたいなバカタレムーブは知りません(稀にそれでも勝てますが)
ガロム跳躍みたいなバカタレムーブは知りません(稀にそれでも勝てますが)
狂乱 互角(?)
グランスによって3tの直接召喚を防ぐとかなり余裕が出ます。
古の昆布 有利
令和のカードを舐めるな
対ビショップ
回復(クルト) 微有利
シオンやら招来やらがあるので基本的には勝てますが、早い段階に揃ってる相手には負けたりします。
回復(エイラ) 不利
エイラ盤面処理する手段が掌握者しかない挙句、コイツ単体だといくら頑張っても2面処理しかできないので普通に負けると思います。今のところまだ当たってません。
ガルラセラフ 不利
特殊勝利には無力です。
対ネメシス
アーティファクトネメシス 微有利
四肢をもがれ、心臓と頭をつぶされたAFにはさすがに勝てます。しかし以前レディアントに負けた記憶があるので微有利ということで。
カラミティモード 不利
特殊勝利には無力です。
ミラー うんち!
言うまでもなくクソ試合です。
まとめ
この記事というかデッキはまだまだ未完成です。ワイはドラジなのでネメシスのカードに詳しくはなく、シャドバがそこまでうまいわけでもありません。ただ、三人寄れば文殊の知恵という言葉もあるように一人では目指せぬ高みもあるということでwikiに記事を置かせていただきました。
環境を支配するようなデッキではないにしろ、裏で暗躍することのできるデッキだと信じているので、今後も改善していきたいと思います。
環境を支配するようなデッキではないにしろ、裏で暗躍することのできるデッキだと信じているので、今後も改善していきたいと思います。
- 10/9 AM1時
記事を作成しました。 - 10/9 AM10時
「ランダムな相手のフォロワー1体を破壊する」のキャラ紹介を修正しました。 - 10/10 PM11時
採用検討枠にカードを追加し、マリガンと相性にほんの少し加筆しました。 - 10/14 AM9時
考察のヒントとくぅ疲みたいなくっさいレスを追加しました。 - 10/15 AM0時
庭園ゾーイとの10先記録を追加しました。 - 10/17 PM9時(日時スキップ)
完結済みの作品→原作がまだ続いているという設定変更から起こったキャラ紹介の時制の矛盾を修正しました。 - 10/29 PM2時
おまけのほうをいろいろ修正&土との10先記録を追加しました。最近リアルが忙しくて更新できずシャドバもやれてなくてすみません。 - 11/16 PM10時
採用検討枠にアンタニタの表記を追加、くっさいレスを更新しました。 - 11/19 PM11時
機械ホズミとの10先記録を追加しました。 - 12/1 PM10時
デッキ概要に加筆、考察のヒントにSSのタイトルと虚数(物体)に関する記述追加。くっさいレスに説明があります。 - 12/7 PM10時
デッキ画像と採用・検討枠カードを更新。SSは明日頑張るので許してください - 12/8 PM11時
考察のヒントに必殺ちゃんSSを追加、くっさいレスを更新。ギリギリ間に合いました。 - 12/15 PM11時
くっさいレスを更新。
- *1 : 環境初期なので今は違うと思います
このページへのコメント
ちょっと質問したいんですが、仮にメインストーリー自体をSS風にして長文読んでもらうってアリですかね?
詳細については伏せますが、今後キャラごとの感情によりフォーカスした展開があるのでそれを強調できる手段で表現したいなと思っています
完結済みの2章は世界線の本筋から分岐した先の閉じた(観測して確定して始点と終点が定まった=世界観にまつわるヒントに3つある線分)世界の物語って事なのかな
閉じた世界に関しては↓の主のシャドバのストーリー(災いの樹編かウェルサ?)に影響を受けた話とも合いそう
全13話なのに再放送や配信済動画には11話しかないのは、分岐の開始と分岐の終わり(それぞれ1話)が残っていると分岐世界ではなくなってしまって完結済の物語として成立しなくなるから?
あと大家は文字通りみんなのママ(進化することで10枚の掌握者を産み出せる)で、私の能力は進化時じゃなくてランダム抽選かコスト確定のどっちかな気はする(大家がストーリーの本筋に絡まない扱いだから違う可能性もあるけど)
難しい…
なんか元ネタでもあるんかね?
明確に元にしたと言えるのは掌握者のフレテキとアークくらいですね
ただ今まで見てきた作品(シャドバのストーリー含めて)に影響されていないと言えば嘘になります
伏線まであるとかこのデッキ実質ワンピースやん
何これ?
デッキは面白そうだからパクらせていただきます