参拝者は「神様、仏様」とごっちゃにして祈っている。
このカードのファンファーレエフェクトは神道系の鳥居で、またカード名は邪神、しかしながら
福呼びの狐のフレーバーテキストには仏様を崇める「寺」だと書いてある。
適当なことしやがってサイゲ無能……と思うかもしれないが、ちょっと待ってほしい。
福を呼ぶ白い狐、ということでビショップの宴楽タイプがお稲荷様モチーフであることは説明がなくとも察せられるだろう。
日本の信仰は、明治維新に伴う神仏分離までは長らく神仏習合であった。
神道における八百万の神々はいろんな仏様が各地に降り立った時の化身であるという考えであり、お稲荷様も神道的には宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)の化身で、仏教的には荼枳尼天(だきにてん)と同一視されている。
現に、現在日本三大稲荷
*1の一つとされる豊川稲荷は妙厳寺という禅寺であり、同じく最上稲荷は妙教寺というお寺のお稲荷様である。稲荷信仰総本山の伏見稲荷大社にも神仏分離まではお寺が含まれていた。
お稲荷様は基本的には豊穣の神とされ、尾が良く実った穂に似ているとか、農業害獣のネズミを食べてくれる益獣であるところから、狐を使いにしているとされた。
拡大解釈から商売繁盛なども含んだ広範な繁栄の神として扱われ、民間人からの信仰も篤かったが、このために庶民のグダグダ信仰の中でさらにごっちゃになっていき、最終的に神とも仏ともつかないがご利益のある何かになっていったため、神仏グダグダのこのカードのあり様も実際の稲荷信仰に近い形となっている。
また、お稲荷様と同一視される荼枳尼天がこのカードのモチーフだとすると、様々な点で辻褄があう。
荼枳尼天は白狐の背に乗った天女の姿として描かれる女性の仏(神)であるため、女性ボイスである点はこれに合致する。
ルーツはもともとヒンズー教の戦や殺戮の神
カーリーの眷属で、敵を殺しその血肉を喰らう夜叉女ダーキニーである。
インド仏教に取り込まれる際に、大日如来(大黒様)にこらしめられ、人の死の半年前から死を迎えるまでを加護し、死後その心臓を食べる死神的な仏となった。その後、日本に伝来する際には閻魔様の眷属として伝えられた。
一方の狐だが、古墳や塚などのお墓に巣を作ることも多く、肉食で死体を食うこともあるために、こちらも死を予告する死神のような扱いをされることがあった。ここから死に関する者として荼枳尼天と狐が関連付けられてから、狐繋がりで稲荷信仰に合流している。
除去とダメージによる攻撃的な効果は死の神であることから、フレーバーテキスト内で殺人犯を裁く働きをしているのは閻魔の眷属という一面からのものであろう。
また、平安時代の荼枳尼天は「一度祀ると一生信仰してなきゃならず、それを破ると没落したり災禍に見舞われる」とされた危険仏で、「あいつ荼枳尼天信仰してるらしいぜー」が悪口やスキャンダルとして機能していたほどの扱いだった。
さらに鎌倉時代には、荼枳尼天は性愛を司るともされたことで、荼枳尼天信仰と称して性的な儀式
*2を行うカルト密教「彼の法」集団が現れ、淫祠邪教として真言宗の一派、立川流から糾弾された。
*3
この辺が荼枳尼天=千箔百面ノ邪神が邪神たる所以だと思われる。