天象旅籠アメツチに来た客。
クニツアマチに対しては「龍人(たつびと)」と名乗り、もてなしを受けることに遠慮の姿勢を見せたが、掟やきまりごとを「流れ」と呼び、その流れに身を任せることをよしとする彼女は身分出自関係なしに歓待を受けることがここの流れと察した彼女はアメツチのもてなしを受けることを決める。
飲み食いや音楽、足湯等を楽しむ毎日を過ごしていた彼女はある日不思議な感覚に襲われる。ちょうどその時、
タケツミによって「宴」になった旅籠煤退治が起きる。その際、客が苦戦した旅籠煤を一太刀で倒したことで、
災藤の興味を引き、彼からの挨拶を受け、封巣殿や旅籠煤について教わる。
宴から幾日か立ったある日、またしても不思議な感覚に襲われ、今度はそれが直感で「記憶が壊された瞬間」だと察する。それを災藤に相談したところ、彼からは旅籠煤からは客の記憶の欠片が出ること、封巣殿からでたそれは秘密裏に破壊する必要があること、記憶を取り戻せば大蜘蛛様が怒り、アメツチは滅ぶこと、そしてそれを防ぐ蔵人《クロウト》の存在を教わる。その後、今日は蔵人もタケツミも旅籠煤は狩っておらず、今日自身の記憶を壊されたのであればそれは賊の類いであるといことを伝えられる。それから災藤から蔵人の加入の誘われ、自身の記憶を破壊した賊を探すため、いつまでもアメツチにいるために誘いを受けて蔵人となった。
アメツチの旅客として楽しみ、蔵人として稀人を狩っていた日々を過ごしていた彼女はある日、自身と同じ龍人であるスーロンとたまたま出会い、その場で意気投合する。傍若無人な振る舞いで「独尊龍」の渾名で人々から恐れられていたスーロンも彼女のことは気に入り、相席と「スー姉さん」呼びを許した。
それからすぐ災藤から稀人の出現の連絡を受け、封巣殿へと向かった。彼が張った封巣殿の結界は破られており、彼からの「出現した稀人は結界をすり抜ける」という連絡との食い違いに違和感を覚えるも、事前に教わった「姿を隠す隠形の術」を自身の水の波紋の能力で見破り、稀人
アンサージュを追い詰める。他の稀人とは違う何かを感じとり、記憶を取り戻すことを諦めるよう説得を試みるも、今度は水すらすり抜ける隠形で逃げられてしまう。
一度災藤へ連絡に戻った際、稀人ととも仲良くなろうと話している
イツルギを見かける。彼と話していくうちに彼がアンサージュと出会い、肩を持ったことを知った彼女はイツルギこそが結界を破ってアンサージュに協力した者だと考え、彼を排除しようとする。しかし、そこにスーロンが現れ彼女の妨害を受けてイツルギを逃がしてしまう。
現れたスーロンに彼女も稀人なのか問いかける。すると「結界を破ったのは確かに自分だが、記憶はここに来た日に取り戻しているため、今は記憶を取り戻そうとはしていない」「蔵人とも交戦したが(その際、災藤とタケツミしか残らなかったらしい)自身は蔵人にも稀人にもつかない存在であり、蔵人とはお互いに不干渉の取り決めを結んでいる」ことを伝えられる。
どこまでも自由気儘に過ごしているだけなことを知ったことでひとまず交戦には発展しなかったが、その時大量の旅籠煤が押し寄せ、大蜘蛛様がお怒りになったことを知る。ひときわ大きい旅籠煤が大蜘蛛様だと推測した彼女はなんとか説得を試みるも話は通じず、結局スーロンが大蜘蛛様らしき旅籠煤を攻撃。
大量の欠片を取り入れていた旅籠煤からは欠片が人は転がり落ちる。それこそが自身が探し求めていた壊れた「ミズチの記憶の欠片」だと察知すると、同時にスーロンが忌々しく思っていた「スーロンの記憶の欠片」だと彼女から主張され、欠片を壊そうとするスーロンと戦闘になる。自分の欠片だと主張するもスーロンは取り合わず、壊されそうになった彼女は欠片を拾い、記憶を取り戻してしまう。
重大なネタバレ
彼女が元々住んでいた世界は邪龍が支配している水不足に遭っていた世界で、村では最も悪い人間が生け贄にされていた。彼女の母親は優しい人間ではあったが、龍人である娘を隠していたことで生け贄にされてしまう。
しかし、水龍の血を引く彼女は水を出す力から重宝され、本来奴隷のような扱いを受ける龍人の中では異例の扱いを受けていた。それが村の「流れ」に乗ったことによるものだと考えていた彼女は例え間違っていると考えたことでもその流れに乗り続け、いつしか自分の意志を持つことはなくなっていった。
彼女の力で余裕を持った村が盗賊に狙われるようになったことで、彼女は戦闘力も身に付けていった。そこで彼女は村人からの邪龍の討伐を命じられる。流れに逆らえば迫害されることを恐れ続けた彼女は命の危険があるその命を受け、邪龍の討伐に成功する。
しかし、邪龍が雨を恵んでいたため、世界の水不足はより悪化した。そして世界は邪龍を討ち取った彼女に全ての責任を押し付け、彼女は村をおわれることとなる。
逃げているうちに、足を滑らせて水に落ちた彼女が目を覚ますと彼女は旅客「ミズチ」としてそこに立っていた。
だが、彼女の世界はそれで終わりではなかった……。
さらに重大なネタバレ
水に落ちた彼女は全てを呪った。流れに身を任せた結末はなんとも酷いものだった。彼女はそれを後悔した。そして彼女自身が強大な流れであろうとした。天に登り龍神となった彼女は怒り狂い、大地を水の中へと沈めた。
気がついた時には世界は一部分だけ陸を残し、後は海となっていた。残された陸へと降りた彼女はそこでかつての邪神以上の傍若無人の振る舞いをする。ある日、村の記録を目にし、残された陸はかつて自分が住んでいた村であったことを知る。記録で自分だけが悪いようにかかれていたことで彼女は怒り狂い、結局最後に残った陸すら沈め、世界は完全に水の底へと沈んだ。
どこまで見渡しても水となった世界に潜った彼女は目を閉じた。そして気がつくと旅客「スーロン」としてアメツチに立っていた。