クロスボウは本来大型の射撃兵器であったバリスタを取り回しが良く、また携帯出来るように小型化させた弩の一種である。
ボウ(弓)とは言うが矢だけでなく鉛玉を飛ばせたりするのでガン(銃)の性質も持っていると言えるだろう。そうしたクロスボウの威力はとても強力で、一時期は「非人道的」と考えられたこともあるほど。
クロスボウの活躍した時期といえば言わずもがな「英仏百年戦争」の時期である。
この戦争においてはプランタジネット朝イングランドは熟練のロングボウ兵を、ヴァロワ朝フランスは数で優るクロスボウ兵を主軸とし、初めはエドワード黒太子が率いるイングランドのアーチェリー部隊が圧倒したが、戦闘が進むにつれて熟練兵が減少。結果、扱いが簡単なクロスボウを用いる兵がその数を以て戦況を巻き返した……というのは戦争における数の重要性を如実に示す有名な故事だろう。
英仏百年戦争の前後には様々な政治的なイベントがあり、語るに尽きる一大イベントなのだが、それは脱線なので割愛。しかし、他方この戦争の終結する1453年にビザンツ帝国=東ローマ帝国がオスマン帝国によって滅亡させられ、中世は幕を閉じる。このオスマン帝国の進撃には大砲、つまりその頃に隆盛を誇った宋で発明された「火薬」の存在があった。
中世の次は近世。近世では火薬によるマスケット銃……つまりクロスボウよりも「より扱いやすい武器」が登場したこと
*1でクロスボウもまたロングボウのように陳腐化する道を辿る。
クロスボウ1つの周囲を見てもなかなかドラマがあり、面白みを感じられるから世界史はやめられない。
ちなみに、クロスボウは火薬がなくても作れたり、小さいものなら大概は飛ばせるということで一応現代でも使われる場合がある。少しはクロスボウマニアへの救いになっただろうか。
さらに余談ではあるが、最近中国で爪楊枝を装填して飛ばす玩具の弩が発売禁止になったらしい。理由は至極簡単に危ないから。そらそうよ。