おんJシャドバ部 - キャル×若月健矢
「なんであんな低めのボール球振るのよ!」
女の怒号と共に鈍い打撃音が暗い部屋に響く。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ドラフト3位でオリックスに入団した期待の新人・若月健矢。そのプロ野球選手として鍛え上げた鋼の肉体も、猫耳の魔法使いと呼ばれた彼女の前には無意味だった。
生まれたままの姿となって床に転がされている健矢を踏みつけるのは彼の嫁・キャル。魔力を込めて夫を足蹴にする彼女の顔は、本来の可憐なものとは似ても似つかない、悪鬼のような風貌であった。
事の発端は2019年8月24日。健矢の妻であると同時に一介のオリックスファンであった彼女も当然テレビ越しにそれを見た。
相手投手の制御を外れ、ホームベースから遥か離れた場所に着弾するボール。そして届くはずもないその球めがけて一心不乱にバットを振る健矢の姿を。
当然、その日にオリックスは1-7の大敗を背負って帰路に着くことになった。
情けない姿ね、とボンテージに身を包んだキャルは言う。
「ほら、いつまでも寝そべってないで立ちなさいよ!さもないとブッ殺すわよ!」
「で、でも……もうヤバいんだって、腰から変な音してるし……」
「ヤバいのはアンタの打率よ!!いいから立て!いつまでもなんjで『ヤバいわよ!w』なんて言われてるんじゃ私まで外歩けないわ!」
「ひ、ひえぇ〜〜……」
そんな涙あり流血有の特訓を経て生まれたのがそう、この俺・レガロアってわけ。