おんJシャドバ部

　この異聞帯が発生した原因は今より約１万４０００年ほど前にも遡る。それは宇宙より飛来した白い巨人・セファールが地球を侵攻し、星と神々を蹂躙した時であった。セファールによって文明は次々と破壊され神たちはほとんどが倒されていった。



　ここからFGOの物語では３つの分岐点が存在する
１，セファールによって神が倒された後、妖精が作った神造兵器である聖剣によってセファールが倒された世界（汎人類史）
２，神が結託してセファールを倒し、聖剣を作る必要がなかった世界（第５異聞帯、説明すると長くなるので割愛）

　そしてブリテン異聞帯は次の第３の分岐点に該当する
　
３、妖精たちが聖剣を作るのをサボった結果、セファールの侵攻を食い止めることができずに何もかもを略奪されてしまった世界

　は？

　そう、この異聞帯はセファールに対抗するための聖剣作りを担っていた６人の妖精が「ま、今回はサボっても大丈夫でしょ」と聖剣を作らずに遊び惚けていた結果更地になってしまった世界である。セファールにとって蹂躙されつくしたあとの地球は海とわずかな水生生物しか残っていなかった。
　６人はそこでようやく自分たちのしでかしたことを理解したが、その過ちを認めることはしなかった。なんで？（殺意）

　６人は海しか残っていない世界に困り果てたが、これらの事態を受けて楽園に避難していたことで生き延びていた唯一の神、ケルヌンノスが人間であるケルヌンノスの巫女と共に楽園の使者として地上へとやってきた。

　ケルヌンノスは失態を犯した６人の妖精たちに反省を促させるため、そして残されて困っていた６人の妖精たちを庇護するという責務のために監督役として楽園から地上へとやってきたのである。心優しきケルトの獣神は６人が住みやすいようにその大きな体で波をせき止めてあげたりしており、妖精たちもケルヌンノスにすっかり懐いていたのだが…。

真　明　熔　解

オベロン・ヴォ―ティガーン



　主人公たちカルデアと共に妖精國を旅した仲間であるオベロン。その正体は汎人類史側のサーヴァントではなく、ブリテン異聞帯にて発生した災厄の一つだった。妖精國ブリテンを滅ぼさんとする意志の具現にして人類の敵対者、人類史を守らんとするカルデアにとっては決して相容れない宿敵であり、シバが観測した地球崩落の真の原因である。

　オベロンは味方として登場していた時はクラスをアーチャー、ライダー、キャスターとクラスをコロコロと変えていたが、物語の終盤にて新クラス「プリテンダー」であることを明かし、主人公たちと対峙することになる。
　プリテンダーは「役を羽織るもの」「装う者」「王位の詐称者」等の意味があり。かの有名なOffician髭男dismの曲「Pretender」も同じように「装う者」という意味からとっている。このクラスの特徴としては「アイデンティティの崩壊も厭わずに魂レベルで自己を偽ることができる詐称者」であり、「ヴォ―ティガーン」としての本性を持ちながらも「オベロン」としての在り方を演じていたオベロンにふさわしいクラスとも言える。ＦＧＯにおける新クラスの追加は３年前にアビーちゃんが「降臨者」フォーリナーとして登場して以来であり、初登場時にはＦＧＯプレイヤー達の度肝を抜いた。

　ヴォ―ティガーンとはアーサー王の伝説において登場する人物の名であり、歴史的には元はヨーロッパ大陸よりサクソン人を招き入れたことでブリテンを侵攻させ、ブリテン人たちをウェールズへと追いやった原因となった人物と書かれている。Fateシリーズにおけるヴォ―ティガーンはアーサー王と戦うために竜の血を飲んだことでブリテン島の意思と同化しており、白き竜へとその姿を変えた。そして戦いの末アーサー王とガウェイン卿によって倒されたといわれている。

　異聞帯におけるヴォ―ティガーンはブリテン島の「終わったはずの歴史（妖精國）が一万年も続いていることが気持ち悪い」という意思によって生み出された終末装置である。ヴォ―ティガーンは何度討ち倒されても姿と形を変えて何度もブリテンを滅ぼそうとしているがその度にモルガンによって倒されている。そして３回目に現れたヴォ―ティガーンがオベロンである。しかし、このときあるトラブルが発生してしまう。ブリテン島は古妖精オベロンとして出力したはずだったのだが、異聞帯の王であるモルガンが異聞帯の外から汎人類史の物質が流れてくるのを許容してしまったため、汎人類史の持つ『妖精王オベロン』としての側面がひっついて生み出されてしまったのである。これによってオベロンは後述の性質も相まってブリテン島の終末のために非常に難解かつ途方もない戦いを強いられる羽目になってしまうのである。

　オベロンが持って生まれてきてしまった性質、それは『夏の夜の夢』という物語がすべてが一夜の夢であるという側面を持っていることから「オベロンの言ったことややったことが全て最終的に捻じ曲がる」という呪いであった。この性質によってオベロンが話す言葉は嘘ばかりの「信じるに値しない」ものへとなってしまうのである。この性質の厄介なところは「言ったことが全て噓になる」のではなく、「信じられないものになる」というものである。つまり、オベロンが話す言葉が嘘なのか本当なのかがわからなくなってしまうため、オベロンとのコミュニケーションが非常に困難なものへとなってしまうのである。オベロンが「好きなもの」は「好きではない」ものになり、「嫌いなもの」は「好きでもない」となるため、オベロン自身も本当に大切なものや好きなものを口にすることができなくなってしまうのである。

　主人公たちに本性をさらしたオベロンは、王子様のような恰好から一転、くすんだ髪に淀んだ碧眼、そして禍々しく先端がとがった手足とまるで童話に出てくる悪役のような容貌であり、自らを庇って死んだ相棒のブランカの死骸を「どうでもいい」と言ってゴミ同然に投げ捨てるといった冷酷な性格になる。そして、本体でもありながら分身でもあるブリテンを滅ぼす化身を呼び出し、地球諸共ブリテンの大地を吸い始める。その姿こそが――――



こちらの超巨大な虫である。この虫は別名「奈落の虫」であり、全長なんと1440km、これは生物ではなく、いわば空洞の概念とでもいうものであり、この虫の口に該当する部分はブラックホールのようになっており、まわりの物体はこの穴に向けて「落ちていく」のである。この穴が開いている以上、全てのものはこの虫へと落下し続けるため、早急に対処しないとたちまち地球全てがこの虫へと飲み込まれてしまうという恐ろしいものである。作中ではこの虫が発現した後、あっという間にブリテン異聞帯を飲み込んでしまった。

　ヴォ―ティガーンはブリテン島を滅ぼすことが目的ではあるが、オベロン自身の目的は人類史そのものを滅ぼすことである。その理由をオベロン自身は、「気持ちが悪いから」とバッサリと語る。そこには誰かの為という行き過ぎた愛もなく、自分の為という自己愛すらなく、人類を侵略したいという野心すらない。ただ、「気持ち悪いから全てを滅ぼしたい」という凶悪な自殺願望、心中願望だというのである。しかし、彼の本当の奥底にある人類根絶の目的は主人公であるプレイヤーが真にオベロンのことを理解し、そのあり方と真っ向からぶつかり合い、その末に彼を打破した際に明かされることになる――――。

先ほども言ったように、オーロラはカルデアにスパイとしてレッド・ラ・ビットを送り込みそれを通じてカルデアの動向を把握しつつ、自らの妖精としての目的のためモルガン転覆を土の氏族長・スプリガンと手を組んでいた。まずオーロラは主人公たち円卓軍に敗北し瀕死の状態で落ち延びたウッドワスに「あなたが負けたのはモルガンがあなたを見捨てて援軍を送らなかったから」だという嘘を吹聴する（実際にはモルガンはちゃんと援軍を送っていたが、事前にオベロンが裏工作によって壊滅させていた）。これによって激怒したウッドワスをモルガンにけしかけ、重傷を負わせた。その後手負いの状態のモルガンに対して、スプリガンがモルガンにとっての唯一の弱点である愛娘バーヴァン・シーを人質に取ったうえで無抵抗のモルガンを自らの兵たちに手にかけさせた。さらにはオーロラが風の氏族の長として持っている「離れたところに声を届ける能力」によって、モルガンの悪事と称した誤情報を妖精たちに吹聴し、それによって妖精たちを激昂させ、自分は一切手を汚すことなくモルガンを集団リンチで虐殺した。

そして、モルガン亡き後の後継者であるノクナレアの戴冠式を自らの領土であるソールズベリー大聖堂で行い、その最中にノクナレアに毒を盛り、裏工作によって妖精たちからの人望を失わせたのちに自らの兵によって誅殺した。さらに、その犯行を主人公たち予言の子一行へと擦り付けることでまたも自らの手を汚すことなく次期女王と予言の子という邪魔者を同時に排除することに成功した。

しかし、それと時を同じくして1000年に一度の大厄災が始まってしまう。今まではモルガンが対処していた大厄災だったが、モルガンが死に、玉座を継ぐはずのバーヴァン・シーもノクナレアもいない今、誰も止めることができずに、妖精國は滅亡が確定してしまった。ブリテンの至るところで妖精たちはモース化し、統率するものもいないので被害は拡大していく一方だった。

そんな阿鼻叫喚の地獄の中であっても、オーロラは大聖堂にある自分の部屋で何一つ不自由なく穏やかな時を過ごしていた。自らが治める町で自らを愛してくれた民たちが怪物と化し、正気を失い暴徒と化した者たちが虐殺をはじめ、至るところから悲鳴が上がっている、それをまるで大したことのない様子で眺めていた。

そんな中…彼女の部屋に一人の少女が入ってきた。

それはオーロラによって助け出され、生きる目的を与えられた妖精メリュジーヌであった。メリュジーヌはかつて形さえない状態だったところをオーロラによって救い出され、名前を与えられた。そして、オーロラのために全てを捧げて生きることを目的として妖精騎士になり、モルガンに付き従いながら、オーロラを守るために戦場に身を置き、傷つきながらも懸命に尽くしていた。
やってきたメリュジーヌを見てオーロラは顔を輝かせる。メリュジーヌはもう妖精國が滅びることを悟り、それをオーロラへと伝えた。そして最期の時を静かに、そして潔く、綺麗なまま共に過ごそうとしたが、オーロラは涼しげな顔でこういった。


一緒に逃げましょう？

あなたなら、私を連れて行けるわよね？



しつこく言うようだが、ブリテンが崩壊を始めたのは1000年に一度の大厄災が始まり、それを止める者がいなかったからである。つまり、一連の崩壊のきっかけとなった張本人は間違いなくオーロラであり、主人公たちの仲間を殺した敵でもある。そして、これほど身勝手な理由で世界を破滅させたにもかかわらず、自らは一人のうのうと生き延びようとしているのである。

彼女はさらに続ける。妖精のみんなはもう自分を愛してはくれない。だから『あれ』はもういらない。それよりももっと楽しい場所へと行こう。ブリテンの外、汎人類史の世界に行けばいい。自分たち妖精よりも哀れで汚くて弱弱しい人間たちだけの世界へと行けば、もっと簡単に理想の世界を作れる…。

メリュジーヌは自分に恩がある。自分を守ることが妖精としての目的だ。だから絶対に裏切らない。とっても可愛くて、素直な私の駒メリュジーヌ。妖精は自分と彼女だけ。二人だけの世界。それはメリュジーヌが最も望んだものでもある。だからきっと裏切らな――――。

…オーロラ。僕はきみを愛している。


きみが信じていなくても、きみにとってどうでもいいとしても、愛している。


…たとえ、どれほどきみが邪悪でも。きみの望みは、すべて叶える。



え、そう、そうなの！じゃあ行きましょう、外の世界へ！

きっとまた、素敵な日々が始まるわ！



朗らかに笑うオーロラと悲しげに目を伏せるメリュジーヌは互いに歩み寄り…






メリュジーヌの一撃によって、オーロラは体を貫かれた。





地面へと倒れるオーロラは何が起きたのかもわからず、自分を貫いたメリュジーヌを見上げる。



……わけないだろう。



……そんなわけ、ないだろう…。





そこには、悲しみと憐憫、そしてその奥に隠された感謝と愛の眼差しで自らを見下ろし、涙を流すメリュジーヌがいた。

ネクロ解説に続く